産後に頻回授乳を頑張っておけば、あとで楽ができる!

母乳の生産に必要なホルモン、プロラクチンが働く様子は、時期によって変化します。
プロラクチンは、それを受け取る「専用の受容体」がないと、母乳を分泌させることができません。
前回の記事にも書きましたが、受容体というのは、細胞表面に生えている「グローブ」のようなもので、それが血液中を適当に飛んできたプロラクチンという「ボール」をキャッチすると、初めてプロラクチンがその細胞に「母乳を作ってね」という指令が出せるのですね。
ボールが飛んでいても、グローブに当たらなければ、素通りするだけです。
つまり、十分な母乳を作るためには、ボールとグローブの数の多さが重要なのです。
<ボールとグローブの数は変化する!>
ボールとグローブの関係は、産後、日が経つにつれて、変わっていきます。
例えば、十分な母乳量を作るためには、「ボールを5個」キャッチしなければいけないとします。
産後すぐは、グローブは10個くらいしか生えていません。
でも、頻回授乳をしていれば、ボールを100個くらい飛ばすことができるので、無事、5個以上キャッチできるのです。
そして、頻回授乳を続けていれば、その刺激によって、グローブを100個くらい生やすことができます。
これが、産後数カ月間で起こっているメカニズムです。
産後数カ月が過ぎる頃には、多くの場合、飛ばせるボールの数は10個くらいに減ってきます(たぶん、いつまでも大量にホルモンを分泌し続けるのは効率が悪いから)。
でも、グローブが100個もあるので、飛んでくるボールの数が10個だけでも、必要な5個以上はキャッチできます。
だから、十分な母乳量を維持することができるのです。
つまり、最初は、
「グラウンド(細胞表面)にまばらにいる、キャッチャー(グローブ)に向かって、一生懸命、大量にボールを投げていた」のが、
だんだん、
「グラウンド(細胞表面)にわんさかいる、キャッチャー(グローブ)に向かって、少しのボールを投げれば済む」ように、
システムが変化していくということなんですね。
左:最初はグローブは少ないけど、ボールをたくさん飛ばせばいい!
右:自然にボールは減ってしまうけど、グローブを増やしておけばいい!
<産後、頻回授乳をしていないと母乳が減ってしまう理由の一つは?>
もし、授乳回数が少なすぎて、グローブの数が10個のままだったら、そこに10個のボールが飛んできても、2個くらいしかキャッチできないかもしれません。
すると、「母乳を作ってね」という指令が2個分しか出ないので、生産量が少なくなってしまうのです。
定時授乳をしていたり、夜間授乳をしていなかったりすると、最初のうちは足りていても、月齢3カ月頃から生産量が減って足りなくなった!ということがありえます。
産後早期の超・頻回授乳はしんどいことも多いですが、それで受容体をたくさん育てておければ、後は、プロラクチンの量が減ろうとも、仕事復帰などの多少のハンデが生じようとも、十分な量の母乳を生産し続けることができるのです。
産後早期の頻回授乳がとても大事!なことは分かりましたが、もし、していなかった場合もあきらめるのは早いです↓
多くのお母さんが経験する母乳不足感
一般的に、赤ちゃんの様子で困ったことがあると、何かとおっぱいのせいにされがちです。
そのため、たとえ必要以上に母乳が作られていたとしても、「母乳が出ていない」と感じることも珍しくありません。
母乳育児を軌道に乗せるために必要なのは、運や根性ではなく、知識とスキルです。
張らないおっぱい・少ない搾乳や直母量に不安を感じたら、母乳不足感の知識が、迷信を撃退する助けになります。
増えない体重・多すぎる授乳回数・長すぎる授乳・おっぱいの痛みを解決するには、ポジショニングのスキルが欠かせません。
2017/4/16更新
コメント
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初めまして。こちらのサイトを拝見してからようやく母乳が出るようになり、心から感謝しています。
さて、ご相談させてください。「産後早期の頻回授乳」とのことですが、具体的には何回程度でしょうか?第一子、生後6日なのですが、1度に4~6時間まとめて寝るため、授乳回数が4~5回に限られてしまいます。起こしてまで授乳するのも赤ちゃん主導ではないでしょうし、対策としては搾乳で回数を稼ぐ、などでしょうか。アドバイスいただけると幸いです。
はじめまして。授乳のタイミングが限られていて、どうするべきか迷っていらっしゃるんですね。
あくまで一般論ですが、新生児期は1日の授乳回数が8回以上、月齢1ヶ月以降は7回以上あると、長期的にうまくいくことが多いようです。
ただ、眠りがちということで、新生児黄疸の可能性がないか気になりました。
黄疸がみられる場合や、おしっこや体重増加に問題がある場合は、赤ちゃんがおっぱいが欲しいサインを出せていない可能性があるので、起こしてでも授乳した方がいいかもしれません。
黄疸・おしっこ・体重増加に問題はなく、それでも授乳回数が8回以下の日が続くようであれば、搾乳を組み合わせることも考えていいかもしれませんね。
さっそくご返信くださり、ありがとうございました。お礼が遅くなり大変申し訳ありません。
産まれてすぐの頃、黄疸は出ていましたので、その影響があったようにおもいます。ただその後、徐々に授乳回数も増えてきました。1ヶ月検診で確認したところ体重増加も問題ないようですし、おしっこも大丈夫そうです。今も夜だけは長時間寝ていますので、搾乳を組み合わせています。しばらくはこのペースで様子を見てみたいとおもいます。
お子さんが順調に成長しているとはなによりですね。とてもすごいことだと思います。
適切な情報を知った上で、自分たちなりのやり方を模索していけるよう、応援しています!
はじめまして。
母乳生産量の限界なのか、単に出づらいだけなのか分からず、増やしたいのでご意見をいただけますでしょうか。
産後ちょうど3ヶ月です。体重の推移は順調ですがずっと母乳が少なく、ベビースケールで計っていますが4-8mlがほとんど、最高記録で18mlでした。
せめて安定的に30mlくらい出せるようになりたいと思っています。
1.現在の母乳の取り組み
(1)授乳は赤ちゃんが欲しがる都度。授乳or搾乳間隔が3時間以上空かぬようにしている。1日の授乳6-8回、搾乳3回ほど。
夜に6-9時間続けて寝る子なので搾乳が2,3回続くことが多い。
おっぱい後に100mlミルクを補足し、1日あたり550-800ml
(2)搾乳は手搾り。15分で4ml、30分で6mlほど。手動搾乳器も持っているがあまり出ないため使わず
(3)桶谷式マッサージに週1回通っており、母乳の味は良いため溜まらずしっかり流れているとの事
(4)哺乳瓶のちくびはピジョンの母乳相談室SSサイズを使用
(5)授乳時間は迷走しており、片乳5分ずつで切り上げたり、5分ずつを2回繰り返したり。ここ数日間は7-10分ずつ
2.母乳が少なくなりそうな要因
(1)助産師さんからは、胸が大きいので搾乳しても母乳が出づらいと言われている
(2)赤ちゃんが吸う時の唇の形は自分の胸に隠れて見えないが、少なくとも上唇はアヒル口になっていない。唇の山がかろうじて見える程度
(3)搾乳時に指の力が必要で、慣れぬうちは指がしびれ感覚が無くなるほどだった。胸を掴む手や腕はずっと筋肉痛
(4)赤ちゃんの吸う力が弱いような気がする。最初の吸い付きは少し痛いほどなのに弱まっていく
(5)赤ちゃんは自分から乳首を離さないので毎回指を入れて離させている
(6)カップフィーディングは赤ちゃんが怒って飲めず断念
(7)桶谷の先生が搾乳するとピュッピュッと母乳が出るが自分では滴るようにしか出せない
(8)桶谷の先生に母乳量を増やせるか尋ねると「量より質。喜んで吸ってくれる状態を維持しよう」と、暗に断られたよう
(9)産後2ヶ月まで、1(1)の取り組みが不十分だった。毎日夜間の6-9時間、おっぱいに何もしなかった
3.その他情報
(1)赤ちゃんの吸着は桶谷の先生からは問題ないと言われています。指を口に入れてみると陰圧がしっかりかかっています。
(2)ポジショニングは自分で見る限りは問題なさそうです。
(3)乳房の熱感は少しあるが、授乳・搾乳時に把持しすぎて痛いだけのような気がします。
これは私の母乳生産量の限界なのでしょうか、それとも出づらいだけでしょうか?
何かお気づきの点などあれば教えていただけますか?
また、「味が良いので母乳は溜まらず流れている」と言われましたが、流れているのに量が増えないのは何故かお考えをお聞かせいただけますか?
もうプロラクチン受容体が増えない時期に入ったのでしょうか?
乳牛についての論文に、プロラクチン受容体は早期に増やす必要があると書かれているものがあったので、ヒトでも同様なのか、いつがタイムリミットなのか知りたく思います。
2(9)が致命的だったと考えていますが、今からでも増やせるでしょうか?
しかし、もうじき赤ちゃんがおっぱい以外に興味を持つ月齢ですし、無駄な努力なら諦めどきかと考えています。
お忙しいところ恐れ入りますが、ご教示下さい。
はじめまして。とても分かりやすい説明で、現状や、たくさん頑張ってこられたことが伝わってきました。
まず、これまでお子さんが順調に育ってきたというのはすごいことですし、これまでの対応は100点満点以上だったと思います。
その上で、「母乳の生産量を増やす」ということに注目すると、改善の余地はあると思われるので、その視点から私が知っている情報をお伝えしますね。
まず、今より母乳量を増やすことは、可能だと考えられます。
以下に、なぜ増えないのか、その理由と、増やすための情報について書いてみますので、納得できそうか考えてみられてください。
●増えない理由
①授乳回数が少ない
②授乳にかかる時間が短い
③ミルクを一回に与える量が多い
④母子共に哺乳瓶に慣れている
●増やすための選択肢
授乳パターン
母乳不足感
ポジショニング
カップフィーデングうまくいかない三大理由
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に、必要な情報がたくさん見つかると思います。
その他
・夜中の搾乳は効果があると思いますが、もし寝たまま飲むようであれば、添い乳で飲ませてもいいかもしれません。
・昼間の搾乳はしなくても大丈夫です。
1日の授乳回数が12回以上になれば、プロラクチン受容体とオキシトシン受容体を増やす効果が期待できます。
・桶谷式とこのブログは、母乳育児に関する意見が合わないことが多いので、「聞いた話と違う」と混乱するかもしれません。まずは、このブログのいろんな記事をご覧になって、納得できそうか考えてみてください。
両方の情報を取り入れてタスクを増やしても、辛いだけで効果は薄い可能性があります。
大熊猫さんがおっしゃるように、⑼の影響は大きいので、母乳量を増やすためには通常より多くの努力が必要になる可能性があります。
でも、搾乳や、体の痛みなどの辛いことは、どんどん省略できます。母乳の味も、心配しなくて大丈夫です。
一番楽に、自信を持って、母乳育児ができるように応援しています。