陥没・扁平・巨大・長大乳頭|原因と対処法

母乳育児は十人十色。
赤ちゃんに個性があるように、おっぱいにも個性があります。「平均とどのくらい差があるか」を気にする必要はありません。
それよりもすべての母子が、自分たちに合ったやり方を見つけられることが需要です。
それぞれのおっぱいに合わせたやり方で母乳育児を軌道に乗せるためには、例えばどんな方法があるのでしょうか。
WHOガイドライン「乳幼児の栄養法」
第7章 乳房の管理と母乳育児におけるさまざまな障害
7.9 陥没・扁平・巨大・長大乳頭(3)
<原因>
乳頭の形が様々なことは、乳房の身体的特徴として自然なことです。
陥没乳頭は、乳頭が固い結合組織に保持されていますが、赤ちゃんがしばらく哺乳をした後は結合組織がゆるみます。
<対処法>
扁平・陥没・巨大・長大乳頭全てに、同じ原則が適用されます。
- 出産前にエクササイズなどをしても役に立ちません。
妊娠中に乳頭の形で悩んでいる場合は、通常と異なる形の乳首からもたいていの赤ちゃんは困難を感じずに哺乳できること、産後に熟練した介助を受けることが最も重要であることをお母さんに説明します。 - 産後できるだけ早く、お母さんはポジショニングと乳房へ吸着させるための介助を受けましょう。
赤ちゃんの方にもたれかかってみるなど、お母さんが様々な姿勢を取ることで、乳房と乳首が、重力で赤ちゃんの口に向かって落ちて、吸着が上手くいくこともあります。 - お母さんは赤ちゃんを乳房の近くにいさせて、たっぷりとスキンtoスキンコンタクトを取り、赤ちゃんが自分流のおっぱいの飲み方を見つけられるようにしましょう。
- 最初の1-2週は赤ちゃんが吸着できないこともありますが、その場合は搾乳してコップで飲ませることもできます。
- お母さんはいろんな姿勢を取りながら、赤ちゃんにおっぱいを飲ませる試みを続けましょう。
赤ちゃんの口の中に搾乳したり、唇に触れてルーティング反射を起こしたりすると、口を大きく開けさせることができます。 - 赤ちゃんの成長に伴って、口はすぐに大きくなり、より吸着しやすくなります。
- 哺乳瓶やおしゃぶりは、赤ちゃんが口を大きく開けなくても飲めてしまうので、避けましょう。
- 扁平・陥没乳頭は、20 mlサイズのシリンジの先をカットしたものを使って、授乳の直前に乳首をストレッチさせることができます(図20)。
プラスチック製の注射器は、ネット通販などで数百円で購入可能なようです。
「カットした側から」プランジャーを差し込んで使うのが、ギザギザの面で皮膚を傷つけないためのポイントです。
原理としては、ひっぱり出せればいいので、毎回の授乳直前に搾乳器(搾るためじゃなくて引っ張り出すため)などを使ってもいいかもしれないし、
最初の5分くらいは乳頭保護器を使って授乳して、結合組織をゆるめてから、直母にトライしてもいいかもしれません。
結合組織が固いまま直母すると、乳房への吸着が下手になるので、乳頭裂傷などが起こるかもしれません。
直母を続けていれば、日に日に結合組織はゆるんでいき、1週間~1カ月くらいで最初から上手に直母できるようになるでしょう。
巨大・長大乳頭の場合は、最初は搾乳で母乳量を確保することと、直母の練習をして乳首を柔軟にすることの両方を、並行して続ける必要があるかもしれません。
ただ、そのうち乳首が柔軟になり、赤ちゃんが成長して口の大きさや筋力がアップすれば、上手に吸着できるようになるでしょう。
授乳の準備としての乳首マッサージについての研究結果は、《妊娠中の乳首マッサージで母乳率は上がらない?》をどうぞ。
ポジショニングは母乳育児を楽にする必須のスキル!
母乳育児を軌道に乗せるためには、それぞれのおっぱい・それぞれの赤ちゃんに合ったやり方を見つけることが欠かせません。乳首の痛みや哺乳効率を改善するために必要なのは、「平均的な形の乳首」ではなく、授乳スキルです。タグ#ポジショニングからチェックしておきましょう。
授乳のタイミングについては【母乳育児が軌道に乗るやり方・疑問・悩み】が役に立ちます。
2017/2/15更新
コメント
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生後3ヶ月の母親です。ためになる記事、目を皿のようにして拝読しております! 扁平の私は入院中に直母がうまくいかず、傷だけを作って退院しました。退院後も毎回噛まれ出血が続き、ある時大きな悲鳴を上げて泣いてしまったところ、それ以降授乳クッションに乗せると泣き叫んでいやがるようになりました。指導を受け、いやがらずに再び口にするまでに回復したときには、すでに生後2ヶ月が経過。その後は、毎回の授乳の3割しか吸着できない、吸着しても陰圧がかからない、2分程度で吐き出す、が継続し、毎回、直母→ミルク→搾乳をしていました。産院、ボク推進の母乳外来、○式母乳相談室、どこできいても陰圧がかからずうまく吸えないことについての解はかえってきません。最近では母乳が作られる刺激も感じなくなりつつあります。どうしたら陰圧がうまくかかるようにになりますか? それ以前にこのような状況でなにから手を打ってよいのかわかりません。なにかアドバイスいただけないでしょうか、お願いいたします。
コメントありがとうございます。2ヶ月以上も孤軍奮闘で努力され続け、大変な苦労だったんじゃないかと思います。様々な専門家に頼っても解決に至らないとは、落胆も大きかったですよね。
そんな中で、授乳を嫌がるのが改善できたのは、こまねこさんがアプローチをいろいろ工夫されたからでしょうし、なかなか思い通りにいかない中、毎回、直母とミルクと搾乳をあげていらっしゃるのも、本当にすごいことだと思います。
コメントからは、うまくおっぱいに吸着できていないのかな?と感じたので、思いつく対処法を羅列させていただきますね。
授乳そのものがお互い初めてなので、上手くいかないこともあると思いますが、まずは、授乳へのストレスをお互い減らすために、カンガルーマザーケアが役に立つんじゃないかなと思いました(お子さんは新生児じゃないので、帽子は不要です)。肌と肌の触れ合いを増やすことは、授乳のハードルを下げるだけでなく、母乳の生産能力を上げる効果も期待できます。
赤ちゃん側のハードルとしては、舌小帯短縮症の可能性をなくせるといいのかなと思います。
次に、授乳クッションを使っていらっしゃるとのことで、ポジショニングに改善の余地がある可能性が高いです。一般的には、授乳クッションを使って効率の良い哺乳をすることは意外と難しいからです。添い乳のように、重力を利用して深く吸着させる方法も役に立つかもしれません。「痛い=ポジショニングが良くないサイン」なので、陰圧がかかっているかどうかより、痛くないかどうかに注目できるといいかもしれません。効率の良い哺乳のためには、乳首の形状より、赤ちゃんの哺乳能力より、ポジショニングが一番重要なポイントになります。
何を試す場合も、もしかすると赤ちゃんが嫌がることがあるかもしれませんが、それは赤ちゃんも一人の人間で、こちらの思い通りにならないのは自然なことでもあります。上手くいかないと焦ったり落ち込んだりするかもしれませんが、「こうすべきなんだ」というよりは、「こんなのはどう?」という遊び感覚で、いろいろ試せるといいなと思います。
母乳は、直母であれ搾乳であれ、乳頭への刺激が1日8-12回以上あることと、乳房からある程度母乳を除去できていることで、生産能力は保たれるので安心してください。上手におっぱいに吸着できるようになるまで、ミルクも安心して使用してください。可能なら、哺乳瓶ではなくカップフィーディングで与えることと、ミルクがいつの間にか増えていないか1日のトータル量を把握しておくことが、母乳育児を続けるために役に立つかもしれません。やってみて、不安なことがあれば、またコメントくださいね。