射乳反射は、母乳の生産量の目安にならない

授乳中、ツーンとしたりチクチクとしたりするような感覚を1回だけ感じる女性や、2回以上感じる女性、あるいは全く感じない女性もいます。

でも、それと、射乳反射(催乳反射)が起こっているかどうか、母乳が出ているかどうかは、あまり関係ないのです。

射乳反射の起こり方は、「個人によって差があるというよりは、授乳するたびに、多少差がある」ようです

<研究内容>

オキシトシンの働きで射乳が起こると、乳腺葉から母乳が押し出されるので乳管の内圧が上がり、乳管は太く短い形に変形することで、拡張する。

乳管の形態学を超音波イメージングで解析することで、射乳の生理学を調査した。

<結果>

乳管が拡張する持続時間は、毎回の射乳や、授乳や、個人によってあまり差がなかった。

授乳中に、乳管直径がどれだけ大きくなったかは、哺乳量・射乳時間・授乳間隔・授乳歴とは関係なかった。

また、24時間トータルの母乳の生産量と哺乳量とも関係なかった。

つまり、射乳反射は、母乳の生産状況や、赤ちゃんの食欲とは関係なく起こることが示唆される。

射乳反射が起こる回数は、授乳の度に違った。

複数回射乳が起こっていた授乳のうち、39%は赤ちゃんは食欲に応じて射乳中に哺乳をやめていた。

<結論>

  • 飲みきれなかった母乳は、射乳が終わってから乳管の奥の方へ逆流する現象が見られた。
  • 授乳中に射乳が複数回起こることは一般的(74%)に見られること。
    しかし、ほとんどのお母さんは気付くことができない。
  • 超音波画像診断は、授乳がうまくいかない女性に、射乳が起こっているかチェックするための有力なツールにもなる。

<その他>

授乳開始から5分間の乳管の直径は、日を変えて計測しても大きな差はなかった。

太い乳管(4.2- mm)、細い乳管(1.9 -mm)

授乳前の乳管直径は2.49±0.84 mm

 

月齢1-6カ月の赤ちゃんを、赤ちゃん主導の授乳の仕方で完母で育てているお母さんの直母量

左の乳房73±26 g、右の乳房76±29 g

24時間トータルでの授乳量は779±181 g

 

<原文>

Ramsay DT et al. Ultrasound imaging of milk ejection in the breast of lactating women. Pediatrics, 2004, 113:361–367.

<ポイント>

  • 射乳反射は、母乳の生産状況や、赤ちゃんの食欲とは関係なく起こる
  • 一般的に、1回の授乳で射乳反射は複数回起こっているけど、ほとんどの女性は気づけない

つまり、

「ツーンとした感覚がない」=「母乳の生産量が少ない」

「射乳感覚を1回しか感じない」=「それ以上授乳しても母乳は出てない」

という判断方法は、全く的外れだった!ということですね。

射乳反射は母乳の生産量(溜まっている量)に関係なく起こるものだし、気づけなくても普通だし、お母さんは何も感じなくても、母乳は出ているのです。

また、4割の授乳では、何回目かの射乳反射が起こっている真っ最中に、赤ちゃんは満腹になって哺乳をやめているんですね。

つまり「赤ちゃんが飲むのをやめた」=「もう母乳は空っぽ」じゃない!のです。

WHOのガイドラインによると、乳房は授乳直後でも、完全に空っぽになることはないそうです。

赤ちゃんが飲むのをやめると、残りの母乳は再び奥の方へと戻っていくのですね。

多くのお母さんが経験する母乳不足感

オキシトシン反射って何?どうすれば起こせるの?など、さらなる情報は、射乳反射から知ることができます。

張らないおっぱい・少ない搾乳や直母量に不安を感じたら、母乳不足感の知識が、迷信を撃退する助けになります。

増えない体重・多すぎる授乳回数・長すぎる授乳・おっぱいの痛みを解決するには、ポジショニングのスキルが欠かせません。

2017/5/13更新

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コメント

    • sc
    • 2017年 12月 23日

    こちらのコメントは以下に移動させていただきました。
    母乳過多と赤ちゃんの便秘が悩み(1ヶ月)
    ●キーワード
    うなる
    大量に吐く
    綿棒浣腸でやっと出る

  1. 経過報告をありがとうございます。
    母乳過多がおさまったとのこと、よかったですね。
    ①赤ちゃん主導にして、飲みすぎる様子などあれば、一時的に根本解決法や時間割法を試してみるなどいかがでしょうか。

    ②そもそも時間割法は、「3時間おきに授乳する」などではなく、「3時間の間は同じおっぱいから何度でも授乳してOK」というもので、授乳回数を増やすこと自体が母乳過多につながるわけではありません。
    10回でも15回でも授乳して大丈夫です。

    ③今後も体重推移は注意が必要です。これまでが増え過ぎていたので、それが落ち着いてきたのか、過飲症候群のせいか、授乳回数が少なすぎるために成長が遅くなっているのか分からないので、今後、妥当な成長曲線を描いていくか、経過観察されてみてはいかがでしょうか。基本は一カ月おきに体重を記録していきますが、私だったら、心配な間は一週間おきに量って、「増えなかった場合は黄色信号」として、意図的に授乳回数を増やすかなと思います。

      • sc
      • 2018年 1月 13日

      お忙しい中返信ありがとうございます。
      ひとまず赤ちゃん主導にしてみようと思います。体重推移もやはり注意が必要ですね。
      時間割法ですが、赤ちゃんが欲しがったら何度でもと記事にあったので、欲しがる様子があれは3時間以内に数回飲ませていました。でもいつのまにか3時間程度では欲しがることがなくなり、前回の質問の状況になっています…。やり方は合っていますか?赤ちゃん主導からまた戻すか分からないけど、もし間違っていれば教えて頂ければ幸いです。

      • 赤ちゃん主導の授乳はそれで合っています!
        ただ、眠りがちの子など、「赤ちゃん任せにすると、そもそもおっぱいを欲しいサインを出さなかったり、控えめで気付きにくかったりする」ことがあるので、成長が順調じゃない場合は少し大人がリードしてあげる必要があるかもしれません。

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