射乳感覚がない?普通です!射乳反射の起こり方
授乳中、「ツーンとする感じ」はありますか?
それとも何も感じないですか?
赤ちゃんに授乳し始めると、脳からオキシトシンが瞬間的に放出されます(=オキシトシン反射)。
すると、乳房の母乳が溜まっている部分が収縮して、母乳が乳管へと流れ出します(=射乳反射・催乳反射)。
授乳中、これらの反射は何回くらい起こるのか?どのくらいの時間続くのか?を研究した論文を、横断的にまとめてみました。
研究①オキシトシンの、血中濃度変化を調べてみた!
産後4-6日と4-10週頃の女性の、授乳前と授乳中の血中のオキシトシン濃度を測定。
全ての女性は、授乳前からオキシトシン濃度が上昇し始めた。
授乳を始めると、全員のオキシトシン濃度が上昇した。
オキシトシン反射がピークに到達するまでが約1分、そこからもとのレベルに落ちるまでも約1分。
授乳中は、オキシトシン反射が何度も起こる(図に示された4人のデータでは、10-15分間に4-5回)。
典型的な反射の起こり方は、約2分おきにオキシトシン反射が連続するパターン。
<原文>
ALAN S McNEILLY, IAIN C A F ROBINSON, MARY J HOUSTON, PETER W HOWIE, Release of oxytocin and prolactin in response to suckling, BRITISH MEDICAL JOURNAL, 1983, VOLUME 286.
研究②乳腺の、内圧の変化を調べてみた!
乳腺の内圧が上昇=射乳反射。
- 射乳が起こるまでの時間
授乳を開始して約80秒 - 射乳の継続時間
1回の反射につき約1分間。 - 射乳間隔
1-2分おきに繰り返された。10分間に4~10回起こった。
<原文>
Cobo, E., De Bernal, M.M., Gaitan, E. & Quintero, CA. Neurophypophyseal hormone release in the human. II. Experimental study during lactation. Am. J. Obstet. Gynec. 1967, 97, 519-529.
研究③乳管の、直径の変化を調べてみた!
乳管の直径が増大=射乳反射。
月齢1-22カ月の赤ちゃんに母乳育児をしている女性が対象。
- 射乳が起こる回数
全ての授乳のうち、74%は複数回、26%は1回のみ。 - 射乳が起こるまでにかかる時間
授乳を開始して4-88秒の間。 - 射乳の継続時間
平均86±51秒。 - 射乳が起こる間隔
122±56秒(45~356秒)。
今回の調査では、88%の女性が、最初の射乳に気づくことができた。
しかし、2回目以降の射乳に気づけた女性は一人もいなかった。
<原文>
Ramsay DT et al. Ultrasound imaging of milk ejection in the breast of lactating women. Pediatrics, 2004, 113:361–367.
まとめ
1回の授乳で、射乳反射がどのくらいの間隔で、何回起こるのかなどは、個人差というよりは、「毎回の授乳によって、多少、違う」ようです。
お母さんの状況や、赤ちゃんが上手に吸着できているかなどの違いで、効果的なオキシトシン反射が起こるかどうかが、わりと簡単に変わってくるからかもしれません。
様々な文献で共通している意見は、
- 授乳中、射乳反射は複数回起こることが多い
(最短で、3分間で3回を記録。授乳時間が長いほど、回数も多くなる。20分以上の授乳を調べた論文は探せていない) - 射乳反射に、大きな痛みを感じるほどはっきり!気づく女性もいれば、全く!気付かない女性もいる
- 気付いたとしても、最初の1回だけのことが多い
- オキシトシン反射は、リラックスしていた方が起こりやすい
つまり、何も感じなくても、射乳反射は授乳中に何度も起こっている可能性が高いんですね。
射乳が複数回起こった場合、オキシトシン反射の強さも、乳管が拡張する大きさも変わらない(=2回目以降が控えめになるわけじゃない)ようです。
それなのに、1回目の射乳に気づけたお母さんでさえ、2回目以降はほとんど気づけないんですね。
重要なこと
効果的に射乳反射を起こすポイントは、お母さんがリラックスできる場所で、ポジショニングとおっぱいへの吸着を上手にして(乳首に効果的に吸てつ刺激が加わるようにして)授乳することでしょう。
ツーンともチクチクともしなくても、普通なのです!
多くのお母さんが経験する母乳不足感
オキシトシン反射って何?どうすれば起こせるの?など、さらなる情報は、射乳反射から知ることができます。
張らないおっぱい・少ない搾乳や直母量に不安を感じたら、母乳不足感の知識が、迷信を撃退する助けになります。
増えない体重・多すぎる授乳回数・長すぎる授乳・おっぱいの痛みを解決するには、ポジショニングのスキルが欠かせません。
2017/5/13更新
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