2時間おき授乳vs 4時間おき授乳

2時間おき授乳と4時間おき授乳は、どちらが母乳の生産量が多くなると思いますか?どちらも同じ?

試しにシミュレーションしてみます。

理論上、母乳の生産スピードは、「授乳後、乳房が空であるほど速く、満タンに近づくほど遅く」なります。

つまり、授乳直後からの時間と、母乳の生産量の関係で表すと、こんな形のグラフになります(※1)。

 g1

ここで、仮に「4時間で母乳が100 ml溜まる=ほぼ満タン」になる人を例にしてみます。

 g1-2

この例の場合、最初の一時間では50 mlの母乳がつくられますが、最後の一時間ではたった5 mlしか作られていません。最初はどんどん作られるけど、時間が経つと、作られる量が減ってくることがよく分かりますね。

では、2時間おき授乳と4時間おき授乳では、「1日トータルの生産量」はどうなるのでしょうか?

※WHOによると、1日に赤ちゃんに必要な母乳量は、約500~1200 ml(平均は約800 ml)。


●授乳が2時間おきの場合(=1日12回授乳)

g4

2時間で80 ml溜まるので、1日トータルでは80 ml × 12回 = 960 ml

も生産することができます。


●授乳が4時間おきの場合(=1日6回授乳)

g5

4時間で100 ml溜まるので、1日トータルでは100 ml × 6回 = 600 ml

1日600 mlで十分な赤ちゃんももちろんいますが、それ以上必要なタイプの赤ちゃんは、母乳不足になってしまいます。

お母さんの生産能力は十分なのに!

「授乳回数 が多い=母乳不足」という常識は、迷信だったということがわかりますね。

つまり、授乳頻度は赤ちゃん任せにしていれば、たくさん必要な時はこまめに授乳するだけで、必要な量を確保できるのです。


<おまけ:超頻回授乳の場合>

●ちなみに、授乳が1時間おきの場合は

g3

1時間で50 ml溜まるので、1日トータルでは50 ml × 24回 = 1200 ml

こんなに多くの母乳を必要とする赤ちゃんは少数派です。

つまり、赤ちゃんが1日中・1時間おきにおっぱいを欲しがる場合は、

「上手におっぱいに吸着できずに、溜まっている母乳の、ほんの一部しか飲めていない可能性

を疑うサインになるのです(新生児と低出生体重児を除く)。

ときどき1時間おきになる場合は問題なし!

1日中ではなく、ある時間帯だけ、赤ちゃんが母乳を1時間おきに欲しがることもよくあります。例えば夕方とか。

そのとき「次の授乳まで数時間空けないとおっぱいが作られない」と思い込んでしまうのは、もったいないのです。

上の例だと、1時間でも50mlの母乳は作られています。

つまり、同じ4時間でも、4時間休ませた授乳の場合は100 mlしか飲めないのに、

1時間おきに授乳した場合は、赤ちゃんが飲める量は50 ml×4回 = 200 mlにもなるということ。

もちろん50 mlまでしか溜まらないから、おっぱいはふにゃふにゃのままですが、どんどん飲ませちゃえばいいんです。

授乳頻度が高いときは、母乳が出ていないのではなく、

「通常よりも生産スピードが速い、フィーバー状態が続いている

と思っていいのです。

「母乳育児が軌道に乗る授乳方法」のやり方・疑問・悩み|まとめ

WHOガイドラインより

上手な吸着の見分け方(図解)

授乳の間隔がこういう場合は黄色信号です


<参照記事など>

※1  母乳の生産スピードは、溜まっている母乳量が増えるほど様々なネガティブフィードバックの影響をより強く受けるので、一次関数的でも指数関数的でもなく飽和曲線に近い形を取ることが予想されます。これは頻繁な授乳はなぜ生産効率が良くなるかをイメージしやすくするためのグラフです。各値は仮です。問題を単純にするために、授乳間隔も一度の哺乳量も生産スピードも一定にしてざっくりとシミュレーションしています。「授乳回数が多いのは母乳不足だからミルク足して」とアドバイスしちゃう人や、「母乳が出てないから頻回授乳になるんだ」「授乳が頻繁すぎて母乳はもう出ていない気がする」と自信を失いそうなお母さんに、「そうじゃないんだよ、頻回授乳は効率がいいんだから自信を持って!」ということを伝えたい記事です。

※差し乳というメカニズムは存在せず、人類は皆溜まり乳であることが前提になっています。

※一般的に、乳房が空に近づくほど母乳中の脂肪濃度は濃くなることが明らかなので、実際は、単純に「量」だけで十分かどうかは判断することはできません。つまり、頻繁に授乳した母乳の方が、カロリーも高くなり、赤ちゃんの体重もさらに増えやすくなる可能性が高まります。なんにせよ、一般的には赤ちゃん任せに授乳した方が順調に成長しやすいということです。

主な参照記事

なぜ定時授乳をすると母乳不足になるのか

母乳の分泌を止める物質が、母乳中に入っている!?

赤ちゃんによって母乳を飲む量が違うのは、生産能力の差じゃない

差し乳は医学的には存在しない

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コメント

    • いしい
    • 2018年 5月 23日

    初めまして。今1カ月半の子を育てています。朝方や夕方に1時間おきの授乳を求められるときがあり、赤ちゃんも眠たいのに寝られず、私の母乳が足りないのかと最終的にミルクを足すと眠りにつく…場面があると、母乳不足かな、と思ってました。大体12時間でオッパイが力尽くしたような感じ方をしてミルクを足す。3週間検診で1日の増加量18.6gその後3週間ごは16.5gと増加量も減ってしまい…今のままで問題無いですと言われましたが心配で。
    この記事を読んで、短い間隔で授乳した方がいっぱいあげられるのがわかり良かったです。不足ではないのですね。
    3時間あけるとゴクゴク飲む音がして安心ですが、頻繁にあげると音がせず心配しました。これからは、ミルクも上手に使いながらも求めてくる度に母乳あげていきたいと思います。

    • 12時間おきにやってくる超頻回授乳に、母乳が空になったような気がしていたんですね。
      月齢が進むほど、体重増加のペースは減っていくものなので、健診で問題ないと言われたなら、本当に問題ないんだと思います!

    • かざま
    • 2021年 1月 06日

    初めまして。
    4ヶ月半になる男の子の体重が3ヶ月の3週目頃から増えず、授乳の際にぐずる頻度が増えてきたため、色々検索していたところこちらのサイトに行きつきました。
    根拠や具体的な記載があってとても参考になっています。
    色々と記事は読ませていただいたのですが、体重が増えず今のペースだと5ヶ月から成長曲線を下回ってしまいそうなのでどう解決していったら良いか悩んでおり、お知恵をお貸しいただけましたら幸いです。

    おっぱいは授乳中反対側が垂れてくる、4〜5時間くらい開くと張ってくるので出る方だと思います。吸い始めて1分くらいで射乳もあります。授乳は1日5〜6回ソファに座って横抱き、おしっこは5〜8回、うんちは3〜6回、今月から夜間授乳をやめてみていますが結局ぐずって起きて3時頃にあげている日も多いです。
    げっぷは授乳途中、後に出させるようにしていますが出ない時もあり、だいぶ経ってから出る時もあります。おならは授乳中に出ることが多く、他の時間帯ではそんなに出ていません。うんちは黄土色のことが多くたまに暗い緑色になることもあります(イカ臭いがにおいがします)。このような状況です。

    ①咥え方について
    吸い初めはできているが、ふにゃふにゃになってくると口をガバッと開けてかぶりつくのではなく、口を尖らせて乳首を吸い込む感じで咥えている。下唇は外側に開いているが上唇は巻き込んでいることが多い。これだと吸着がうまくできていない?

    ②授乳中のぐずりについて
    後乳を飲ませたいが、ふにゃふにゃになってくると(大体7〜10分前後くらい)手で突っ張ってきたり乳首を口で引っ張ったり、おっぱいを強く握ってきたり(痛いので指を握らせても強くにぎります)、うーと唸ったりしてぐずってしまう。酷くなると仰け反る。仕方なく反対側に変えるとだいたい飲む。
    反対側を吸われると刺激されて垂れてきてるので、後乳はまだ飲めそうなくらい残ってると思われます。
    そのまま飲ませようとするとぐずりがひどくなりそうだがそれでも反対側に変えずに飲ませた方が良いのか?それとも①の咥え方が下手なのか、ポジショニングが良くないのか(おへそが私のおへそに向かい合うように抱いています)?
    特にお風呂後の授乳では数分で上記のようにぐずってしまい、仕方なくしばらく時間を置いてから再度飲ませていますが、その際も同じ様な状態になります。夜間や朝起きてすぐの授乳はぐずらないことが多いですが、それ以降はぐずることが増えました。

    ③寝落ちしてしまう場合
    大人しく飲む時は長い時1時間近く離さない。反対側から垂れてたりするので吸われている感覚はあるが、途中寝落ちしている。寝落ちしていても離すとまた咥えようとするので咥えさせて飲ませているが、こちらから離さない限りずっと咥えたままになってしまい授乳がすごく長くなる。寝落ちしていても飲んでいるのでしょうか?一旦中断して少し遊ばせるなどした方が良いのでしょうか?

    • はじめまして。その後いかがでしょうか。
      お子さんの体重推移と、飲み方について悩んでいらっしゃるんですね。

      いただいたコメントからは、くわえ方については、気にすべき優先順位は低くしていいのかな、まずは飲み方が気になるかな、という印象を持ちました。

      体重について、増えやすくするためにすぐ効果があると思われるのは、授乳回数を増やすことです。
      一般的には、月齢4〜5ヶ月で、一日5〜6回の授乳で上手くいく確率は低いので、ひとまず、一日8〜12回を目安に増やせるなら、すぐ効果は出るのではないかと思います。

      次に、おっしゃるように後乳が飲めていない可能性があると思います。
      しかし、母乳過多でなければ、授乳頻度を増やせば、後乳も飲みやすくなるので、自然と解決する可能性があります。
      その場合、後乳を飲ませることにこだわらず、赤ちゃん任せで自由に飲ませて、大丈夫なのではないかと思います。

      母乳過多の場合は、授乳回数を増やしてもウンチやおならの様子が変わらなかったり、頻回授乳にすることでさらに生産量が増えて、一時的に悪化するようなサインが見られるかもしれません。
      その場合は、母乳過多の対処法を参考に、しばらく大人主導の授乳をする必要があるかもしれません。
      (対処すれば、数日で効果が出ることが多いです)

      授乳中の寝落ちは、赤ちゃんにはよくあることなので、付き合えそうな時は好きなだけ付き合って問題ないし、都合が悪い時は切り上げてもいいと思います。

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