お母さんが自分一人で育児方法を決断することは絶対にない?
育児のやり方は古今東西、千差万別です。
全てのお母さんは、迷ったり後悔したりすることもあるかもしれませんが、自分なりのやり方を選択しながら育てていくでしょう。
でも、この「選択」は、お母さん自身の判断だけで行われることはないと言われています。
どういうことでしょうか?
WHOガイドライン「乳幼児の栄養法」
第9章 政策・医療制度・地域活動
9.3 家族や地域での行いを強化すること
9.3.1 行動変容のためのコミュニケーション
お母さんが、自分だけで乳幼児の栄養法をどのように行うか決めることはありません。
家族や地域社会の様々な人々の影響を受けます。
やり方を改善するためには、家族や地域社会の通例を変える必要があります。
そのためには、行動変容のためのコミュニケーションの計画を立てる中で、これらの様々な人々の信念について考慮しなければいけません。
コミュニケーションの計画を立てる際には、個人の変容段階を理解することが役に立ちます。
推奨されたやり方を知らない状態の人の、多くが踏む段階として、
- まずそれを知り
- 新しいやり方を試す計画を立て
- やり方を試行し
- やり方を採用し
- それを維持し
- そして最終的に新しいやり方を支持するようになります(13)。
コミュニケーションを伝える人は、この過程を理解すれば、対象となる人々の段階を見極め、次の段階へ進める計画を立てることができます。
「知らない状態」の段階にいる人に必要とされる、最も重要なものは情報です。
学んだことを試すことを考えている段階では、それを励まし、試す機会を与えることが役に立ちます。
すでに新しいやり方を試みている段階では、ヘルスワーカーは利点を強調し、家庭への訪問や支援グループを通じて家族や地域社会からの反対に打ち勝つ手助けをするべきです。
変容段階を一つ進めるためには、マスコミ・電子媒体・印刷媒体、地域での問題提起と解決のための活動やイベント、対人コミュニケーション(地域団体・個人カウンセリング・母親同士の支援団体・自宅訪問) を含む別のコミュニケーションアプローチの複合手段を必要とします。
これらのアプローチはお母さんや家族、地域のリーダー、またその地域社会で影響力のある人々に直接的に訴えかける必要があります。
つまり、最適なやり方で子どもを育てるためには、お母さんだけに正しい知識を与えるだけでなく、周囲の環境も改善する必要があるということですね。
「行動変容のためのコミュニケーション」とは、育児に限らず、「今までの慣習と違うやり方をできるようになるためのステップ」を、計画的に実行する方法です。
乳幼児の栄養法でいえば、
例えば「3時間おきなどの定時授乳が当然だった地域」で、定時授乳は様々なデメリットがあることが分かっているので、
「欲しがるときに飲ませる、赤ちゃん主導の授乳をした方がいいんだ」という情報をまず知り、
赤ちゃん主導の授乳によって育てるやり方を試す計画を立て、やり方を試し、やり方を採用し、それを続け、そして最終的に「赤ちゃん主導の授乳は良いな」と思える段階に進めていくようなことです。
その過程で、ヘルスワーカー(医療従事者)は、
- 情報を与えること
- 励ましたり、納得できるまでメリットを説明したりすること
- お母さんが、家族に「授乳時間があかないのはおかしい」などと言われても、それを信じてしまわないようにサポートすること
などの、とても重要な役割を担っているんですね。
「赤ちゃん主導の授乳」って何?→※正しい授乳のタイミング
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