ビタミンDサプリの効果を示した論文とくる病予防
サプリ推進派は、「くる病予防にはビタミンDサプリが役に立つ」と主張しますが、実際にサプリの有効性を示すデータは、意外とありません。
その中で、珍しく、ビタミンDサプリの効果を示した論文があったので、ご紹介します。
1994年に発表された研究によると、急性呼吸器感染症や腸炎が蔓延していて、5歳以下の死亡率が高い途上国では、ビタミンDサプリを与えることが、くる病予防になるという結果が出ました1。
さらに、くる病の罹患率と相関があったのは…
・日光浴をほとんどしない(※1)
・魚を食べない
・母親は18歳未満(※2)
・母親は避妊をしない
※1 いくつかの論文から得られた限られた情報だが、途上国では、しばしば幼い子どもを家の中にキープすることがあるらしい。養育者は病床にふせっているのか、家の中で働いているのか、外で働いているのかを含め、その理由は分からない。
※2 母親になった年齢が低すぎることは、女性本人が十分な教育が受けられないことや、収入の低さと相関することも多い。
これらより、子どもがくる病になった家庭の多くは、乳幼児の死亡率が高く、厳しい社会情勢の中でも、特に困難な状況で子育てしていることがうかがい知れます。
ビタミンDに注目していていいの?
様々なケースレポートやデータを見てきた印象としては、全ての子どものくる病予防に効果のあることは、
乳幼児の養育者が、
・そこそこの教育を受けて育ち
・そこそこの経済力を持っていて
・そこそこ社会から孤立していないこと
ではないかと考えています。
このまま「ビタミンD不足」のせいにしていて、
・根本解決へ向かえるのか?
・自分の母乳に自信を失う母親が続発していないのか?
気になるところです。
くる病の場合は、栄養失調が蔓延している地域社会ではよくみられますが、栄養(カルシウムやタンパク質をはじめとした様々な食材)がそこそこ足りている子どもはなかなか発症しないようなので、栄養は最も重要だという印象を持っています。
もし本当に、今、日本でくる病患者が「増えている」としたら、それは日光浴が減ったからでも、母乳育児が普及したからでもなく、乳幼児を育てている家庭の経済的、あるいは精神的な余裕がなくなってきていることを、まず一番に心配するべきかもしれません。
くる病予防のための実践的ポイント
実際に子どもを持つ身としては、予防のための実践方法も必要な情報だと思います。
今後も新しい事実が出てくるのではないかと思いますが、現時点で考えられることをまとめます。
●私たち親が、子どものくる病を防ぐためにできる有効なこと
現時点では、くる病予防にもっとも効果的なのは、月齢6ヶ月になる頃から、主食、動物性食材、緑黄色野菜、乳製品、豆類、油脂類を中心に、様々な食材を、ぼちぼち提供することではないかなと考えています。
※完璧な食事バランスの民族はたぶん存在しないので、完璧を目指さなくても大丈夫。感覚過敏、アレルギー、経済的な理由などで食べられる食材が限られる場合も、基本的な栄養の知識があれば、選択肢が生まれます。
続いての話は…
一般的には、ビタミンDの経口摂取量とくる病の発症率に相関はなさそうだけど、ビタミンDは大切なことに変わりありません。
ついでに、不足しないための目安を次の記事でまとめてみたいと思います。
くる病とビタミンDのシリーズはこちらから読めます。
主な参考文献
1 Beser, E., and T. Cakmakci. “Factors affecting the morbidity of vitamin D deficiency rickets and primary protection.” East African medical journal 71.6 (1994): 358-362.
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