くる病のイメージと現実のズレを、いったん整理しよう

くる病とは、骨がうまくミネラリゼーションできず、骨の形や密度に異常が出る病気。
1645年にイギリスの医師であるDr Daniel Whistlerによって発見されたそうです1。
くる病に関する論文を検索し始めた数年前、私は違和感を感じていました。
「くる病」をキーワードに論文検索しても、あるいは論文タイトルに「くる病」という単語が入っていてさえしても、その内容に、骨の話は一切出てこない文献ばかりヒットするからです。
くる病が増えている、子どもの骨が危ない、とさかんに言われているのに、なぜ骨の話は出てこないのか…
結論から言うと、最近は、「ビタミンDの血中濃度が、ある基準より低い状態」を指して、くる病(栄養上のくる病など)と表現することがあるようです。
つまり、骨をはじめとして、何も身体症状はなく、ごく健康的に暮らしていても、「くる病」と呼ばれることがあるらしい。
しかし、最初からこうだったのではなく、少なくとも1950年代頃までは、「栄養上のくる病」という言葉は、「栄養不足を起因としたくる病」というニュアンスで使われていたようで、骨の異常などの、様々な身体症状をともなっていました。
どうやってくる病の定義が変わってしまったのか、今、皆が恐れている「くる病」の正体とは何なのか。
真実を探るため、我々はアマゾンの奥地へと向かった…
ということで、これから、くる病をテーマにした記事をアップしていきます。
前半は、「くる病研究の歴史」から明らかになった、大いなるミスリードについて。
後半は、生化学の視点から見た、ビタミンDの最新情報について、考察したいと思います。
参考
1 Allgrove, J. “Is nutritional rickets returning?.” Archives of disease in childhood 89.8 (2004): 699-701.
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