WHOも参考にしている「授乳1回」の数え方

授乳後20分しか経っていないのに赤ちゃんがまた飲みたがった場合、これはさっきの続き?それとも2回目の授乳?
本来、赤ちゃんの飲み方というのはバリエーション豊富なものなので、どこからどこまでを「授乳1回」とすればいいのかは、研究者ですら迷うのです。
大前提として授乳回数なんて全然気にしなくていい!んですが、1日の授乳回数を聞かれる機会は多いので、せっかくなら学術的な定義を一つ知っていると役に立つかもしれません。
「授乳1回」の定義
①2分以上吸てつし、前回の授乳が終わってから30分以上空いていること
②その上で、「授乳1回」は次の3パターンに絞られる
A: 片乳
例えば右のおっぱいだけ飲んで満足した場合。
片方の乳房を飲み終わって、30分以上経って反対側を飲んだ場合は、片方ずつカウント(計2回)。
B: 両乳
例えば右→左と両方飲んだ場合。
片方の乳房を飲み終わってから、30分以内に反対側を飲んだ場合は、ペアでカウント(計1回)
C: おかわり
例えば右→左→右と飲んだ場合。
反対側の乳房を飲み終わって、30分以内に再び最初の乳房を飲んだ場合は、まとめてカウント(計1回)。
授乳回数は数え方で変わる!
例えば、こんなスケジュールを考えてみたいと思います。
以下は、赤ちゃんの哺乳パターンを調べた文献をもとに、自分の経験も加味して、授乳回数・哺乳時間・授乳間隔などが妥当な範囲になるように、授乳の開始時刻と終了時刻をざっと設定したものです。
赤ちゃんの飲み方というのは実に多様なものですが、この例は「ちょっとずつ飲むタイプの赤ちゃん」寄りのパターンになっているかと思います。
哺乳回数(赤ちゃんがおっぱいをくわえた回数)を数えると、16回です。
では、ここで、さっきの定義をもとに数え直してみます。
「授乳回数」として数えると、1日8回になりました。だいぶ、印象が違いますね。
実際に、この定義でカウントすることで、
・ちょっと飲んで休憩して、改めて続きを飲んだ時
・くわえてはみたものの、やっぱりいらなかった時
・一度ごちそうさまをしたように見せかけて、まだ途中だった時
など、赤ちゃんによくある毎回の飲みムラも、カバーしやすくなると感じます(=しっかり飲んだ回数に近い数字になりやすい)。
WHOは、ガイドライン「乳幼児の栄養法」を策定する際にこの定義を用いた論文を参照しているので、WHOが推奨する「母乳育児を軌道に乗せるために必要な授乳回数は1日8-12回以上」という数字には、こういう含みもあるのかもしれません。
結論
- もしも、「授乳回数が他人よりも多すぎる?」と悩んでいたら、一度このやり方で数え直してみてください。すると、「しっかり飲んだ授乳回数」は思ったより少ないことに気づけるかと思います。
- 授乳回数を聞かれた時、相手が母乳育児に理解のある人だと分かっている場合は、好きなように申告すればいいと思いますが、理解がなさそうな人の場合は、この定義を参考に、できるだけ少なめに言っておいた方が無難かもしれません(いろいろアドバイスされると面倒だ)。
- 授乳回数で悩んだことのない方は、どうぞそのまま進んでくださいね!
※「母乳育児が軌道に乗る授乳方法」のやり方・悩み・疑問|まとめ
多くのお母さんが経験する母乳不足感
張らないおっぱい・少ない搾乳や直母量に不安を感じたら、母乳不足感の知識が、迷信を撃退する助けになります。
増えない体重・多すぎる授乳回数・長すぎる授乳・おっぱいの痛みを解決するには、ポジショニングのスキルが欠かせません。
<参考文献>
Kent J et al. Volume and frequency of breastfeeding and fat content of breastmilk throughout the day. Pediatrics, 2006, 117(3): e387–392.
Ho¨ rnell A, Aarts C, Kylberg E, Hofvander Y, Gebre-Medhin M. Breastfeeding patterns in exclusively breastfed infants: a longitudinal prospective study in Uppsala, Sweden. Acta Paediatr. 1999;88:203–211
2017/5/13更新
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