授乳OKの薬・NGの薬(一部抜粋)|WHOガイドライン
授乳中は薬を飲んだらダメ?
どうしても薬を飲まなければいけない場合は、断乳するしかない?
実際は、医薬品の注意書きに「授乳禁忌」と書いてあったとしても、授乳OKな薬はたくさんあるようです。
WHOガイドライン「乳幼児の栄養法」
第8章 母親の健康
8.3 薬物療法と薬(4)
薬の中には、お母さんが飲むと母乳中に出てくるものもあります。
絶対的に授乳禁忌になる薬は極めて少ないです。
しかし、赤ちゃんに副作用をもたらす薬もいくつかあります。
その場合は、より安全な別の選択肢を用いることや、授乳を一時的に避けることの正当な理由になるでしょう。
表10に重要な薬剤に関するWHOのリスト(4)に載っている薬の指導方法がまとめられています。
添付資料1に薬の副作用の追加情報が載っています。
表10 母乳育児と母親の薬物療法
<授乳禁忌となるもの>
- 抗がん剤(代謝拮抗剤)
- 放射性物質(一時的に授乳をやめる)
<授乳を続けていいもの>
副作用の可能性があるので、赤ちゃんが傾眠状態にならないか経過観察するもの
- 一部の精神疾患の薬、抗けいれん薬(個々の薬剤参照)
可能なら、これ以外の薬剤を使用した方がいいもの
- クロラムフェニコール、テトラサイクリン、メトロニダゾール、キノロン系抗生物質(例:シプロフロキサシン)
赤ちゃんに黄疸が出ないか、経過観察が必要なもの
- スルホンアミド(抗菌薬)、ダプソン(ハンセン病治療薬)
- スルファメトキサゾールとトリメトプリムの合剤(=コトリモキサゾール(抗生物質))
- スルファドキシンとピリメタミンの合剤(=ファンシダール(抗マラリア薬))
これ以外の薬剤を使用した方がいいもの(母乳の生産を抑制する恐れあり)
- エストロゲン、エストロゲン含有避妊薬、サイアザイド系利尿薬、エルゴメトリン(子宮収縮薬)
通常の服用量ならば安全なもの
赤ちゃんは経過観察をしましょう。
最も広く使用されている薬剤
- 鎮痛剤、解熱剤:アセトアミノフェン、アスピリン、イブプロフェンを短期間使用すること/モルヒネ(麻薬性鎮痛薬)、ペチジン(麻薬性鎮痛薬)をたまに使用すること
- 抗生物質:アンピシリン、アモキシシリン、クロキサシリンなどのペニシリン系、エリスロマイシン
- 抗結核薬、ハンセン病治療薬(上記ダプソンを参照)
- 抗マラリア薬(メフロキン、ファンシダールは除外する)
- 駆虫薬、抗真菌薬
- 気管支拡張剤(例:サルブタモール)、副腎皮質ステロイド剤、抗ヒスタミン薬、制酸剤、糖尿病の薬、ほとんどの血圧降下剤、ジゴキシン(強心薬)
- ヨウ素・鉄・ビタミン類の栄養サプリメント
WHOのリスト(4):「母乳育児と母親の薬物療法」WHO必須医薬品リスト第11版|目次
このリストでは、薬がそれぞれ
- 授乳と両立できる
- 授乳と両立できるが、副作用に注意
- 可能なら避ける。使用する場合は副作用に注意
- 可能なら避ける。母乳の生産を抑制する可能性あり
- 授乳禁忌
の5つに分けられ、一つ一つに、注釈がついています。
<一般のお母さん向けの注意点>
カタカナで書かれている薬剤名は、成分の名前です。
医薬品の商品名は全然違う名前でも、成分表示を見ると同じ薬剤名が書かれていることもあります。
つまり、医薬品を飲んでも問題ないかを調べる場合は、商品名ではなく、成分表示で確認する必要があります。
日本では「授乳禁忌」とされているものがほとんどなので、「薬は飲まずに根性で耐える」か「薬を飲んで断乳する」かの二択を迫られることもありますが、実際はそのどちらも必要がないことが多いようです。
特によくあるような頭痛・生理痛に用いられる鎮痛・解熱剤や、抗生物質などの治療薬、花粉症の薬、歯の治療や外科手術のための麻酔などは、授乳しながらでも使えるものがたくさんあります。
規定量を守ること、服用は必要最低限にすること、赤ちゃんの様子に注意することが大切です。
2017/4/15更新
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