現在のくる病に対する研究の特徴|骨かビタミンDか
今では、「母乳はビタミンDが少ないからくる病のリスクがある」という説は、ほとんど常識になっています。
しかし、くる病と母乳に関する論文を100本くらいチェックしてみると、こんなことが分かってきました。
前回までの、「くる病の意味がこっそりすり替えられた歴史」に続いて、今回は、最近の論文ではどう考えられているのかの話。
2010年代
くる病に関する論文は、昔ながらの手法を守る「ビタミンDサプリ推進派」と、いろんな視点で研究を進める「その他派」に分かれる
ビタミンDサプリ推進派の特徴はざっとこんな感じ
くる病とは?
・ビタミンD血中濃度が基準より低いことと、ほとんど同じ意味で使う(身体症状はないことが多い)
病因は?
・「くる病の原因はビタミンD不足」と断言していることが多い
流行地域は?
・かつて終息したはずのくる病が増えていると考えている
・今でも、くる病は世界的な問題だと考えている
研究手法は?
・ビタミンD血中濃度を測定する。
・母乳を飲んでいるか調べる。
・骨を調べることはほとんどない。
ビタミンDに関する結論は?
・ビタミンDサプリを飲めば、血中濃度を高められるのでオススメ
※一般的に、年齢問わずビタミンD添加されているものを日常的に摂取していない限り、基準を下回ることは珍しくないようなので、調べればいくらでも「ビタミンD不足」のデータは出てくるらしい。
ビタミンD血中濃度の基準も徐々に高くなっているのか、今では、血中濃度を測定できるようになった当初より、倍の値が採用されていたりする。
ビタミンDサプリを推奨する論文では、2010年代は、「ビタミンD欠乏症」がメインテーマになっている(骨は蚊帳の外)。
その他派の特徴はざっとこんな感じ
くる病とは?
・骨の異常をともなう身体症状のある疾患のこと
病因は?
・栄養失調、遺伝子の変異など、様々な要因が関連しているが、まだ分かってない部分も多い。
流行地域は?
・途上国、移民や難民など、栄養状態が良くない地域社会でよく見られる病気
研究手法は?
・レントゲン画像、骨の総ミネラル量などの骨格パラメータ、食生活、遺伝子変異、ビタミンD血中濃度などを調べる。
・母乳という単語が出てこないことも多い。
・他の疾患との関連を調べるものも多い。
ビタミンDに関する結論は?
・ビタミンDはとても大切な物質だが、くる病患者は必ずしもビタミンD不足とは限らない
・今のビタミンD血中濃度の基準では、子どもの骨の健康は評価できない
・今のビタミンD血中濃度の基準は、くる病の診断には、役に立たない(くる病患者のビタミンD血中濃度が正常なこともある)
・ビタミンDサプリをルーティンとして子どもに与える意味はあるのか不明
意外ですが、偏った研究デザインにしなければ、「ビタミンD血中濃度と、骨の健康は関係ないかも?」というデータが出てしまうようで、くる病界には、矛盾した結論が乱立しています。
さて、次の記事では、私たちが信じていた「母乳はくる病の原因説」を唱える論文には、どんな特徴があるのか、ちょっとだけのぞいてみようと思います。
くる病とビタミンDのシリーズはこちらから読めます。
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