白斑の原因と対処法|WHO

乳頭の先端に、1ミリくらいの小さな白い点ができて、授乳すると激痛を感じる白斑。
「ワセリンや馬油を塗ってラップでパックするといい」
「口内炎薬のデスパコーワを塗るといい」
「針で刺しちゃだめ」
「頑張って直母や搾乳を続けて自然治癒させるべき」
あたりが、よく聞く主なパターンだと思います。
WHOはなんといっているのでしょうか。
乳腺炎;原因と対処法, World Health Organization
7.2 乳管の詰まり
通常直径1 mmほどの白斑が乳頭の先端に現れることがあり、これも乳管の詰まりと関連しています(3; 17; 98)。
白斑は哺乳中にかなりの痛みを伴う可能性があります。
白斑は、滅菌した針を使ったりタオルでこすったりすることで、詰まりが即解消されます。
白斑は、上皮の過成長(水泡を形成する)や、微粒子や脂肪物質が蓄積したためと考えられています。
情報はたったこれだけ?という感じですが、白斑も、2017年現在になっても、ほとんど研究されていないようです。
どうやって白斑ができるの?
2012に、水疱組織を顕微鏡で調べた論文があります(※1)。
それによると、以下のことが分かったそうです。
・発見された細胞の種類から、母乳が乳管の周囲の組織に漏れ出たことによる、炎症反応が起こっていることが示唆された。
・感染が生じているサインは見つからなかった。
・中程度の強さのステロイドの外用薬治療で治癒することを見出した。
・白斑や水疱は、乳頭の外傷に対する炎症反応であると結論づけられた。
つまり、上手くおっぱいへ吸着できないと、乳首は傷つきやすくなるのですが、その一つのパターンとして、
「乳管の開口部が傷ついたために、白斑や水疱が生じている」可能性があるということですね。
ステロイドを乳首に塗っても大丈夫?
ステロイドが授乳にどのような影響を与えるかの情報も少ないのですが、例として、『ロコイド(※2)』について、授乳と薬に関する最新情報を得ることができるLactMedで調べると、こんなことに注意が必要だそうです。
・軟膏は、赤ちゃんがパラフィン(軟膏の成分)を大量に摂取する可能性があるので、乳房に塗る場合は、水混和クリームか、ゲル状にして使用すること。
・乳房に塗る場合は、すべてのステロイドは、授乳前にしっかり拭き取ること。
・ 使用量と塗る範囲は最低限にすること。
(accessed Oct 2017)
白斑も研究が進んでいないので、現時点では、誰も「こうすれば良い」と断言できないと思われます。
ただ、風邪などと違って、自然治癒を前提とするには、あまりに激烈な症状だという印象があります。
よって、もし私が患者になったとしたら、なるべく根性より医療や科学的根拠の方と仲良くしたいので、例えば以下のような処置をしてほしいなと願います。
・滅菌した針などで詰まりを即解消→詰まりはできるだけ早く除去した方がいいし、自然治癒を目指すのは痛すぎる
・ローションタイプのステロイド塗布→特に水疱タイプの、白斑の治りを早める効果が期待できる(授乳前にふきとる)
・抗菌薬の経口投与→悪化を防ぐ(細菌感染のリスクがある場合。WHOによると、乳房は、塗り薬より経口薬の方が効きがいい)
・効果的な授乳スキルのフォローアップ→授乳スキルを改善しないと、何度も再発しうる(再発するのは、授乳のやり方が良くないサイン)
※ネット上では「ステロイドが入っていない口内炎の薬『デスパコーワ』を塗れば、拭き取らずに授乳していい」という情報が広まっているようですが、デスパコーワもパラフィンでできているので、用法用量が重要だろうし、どの成分が効果があるとされているのか、実際に効果があるのかは分かりません。
母乳育児は、知識が深いほど、試練は小さくなります。
もし熟練したスキルと知識で母乳育児をサポートしてくれる人が周囲にいなければ、ポジショニングの情報が役に立つかもしれません。
乳房の炎症、詰まり、しこりなど、さまざまな痛みやトラブルの原因と対処法は授乳の痛みからもどうぞ。
授乳を続けながら使用できる薬はたくさんあります。どうか、母親の根性頼みにするのではなく、誰でも楽に母乳育児ができるようになりますように。
※1 O’Hara, M. A. (2012). Bleb histology reveals inflammatory infiltrate that regresses with topical steroids; a case series. Breastfeeding Medicine. Sep 2012, 7(S1):
※2 おくすり110番より
商品名;ロコイド
成分名;ヒドロコルチゾン
ステロイドの強さ;4群 (Medium)
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。