乳首の傷が乳腺炎の原因に?意外な関係|WHO
乳腺炎を経験したとき、乳首の痛みもあることがめずらしくないようです。
今回は、乳首の痛みと乳腺炎の関係についての意外な話です。
乳腺炎;原因と対処法, World Health Organization
5.4 感染経路
どのように乳房が感染症を起こすのかは、明らかになっていません。
乳管を通って腺房へと伝わる;血行性の伝播;乳首の裂傷から管周囲のリンパ系へ伝わるなど、いくつかの経路が示唆されてきました(18; 39; 52; 94; 137; 170)。
乳頭裂傷は、乳腺炎になると頻度が高まることが報告されてきました(41; 43; 71; 78; 100; 170)。
Livingstoneは、前向きランダム化臨床試験によって、乳頭裂傷になった女性からどの黄色ブドウ球菌が培養されるかで、抗生剤治療の有効性を研究しました。
彼女は、抗生剤の全身投与を受けた女性は、外用薬の投与あるいは、授乳技術を改善しただけの女性に比べて、4-5倍乳腺炎にかかりにくいことを発見しました(97)。
よって、乳腺炎も乳頭裂傷も赤ちゃんが上手くおっぱいに吸着できていないことが原因で起こりうる可能性に加えて、乳頭裂傷が乳腺炎への入り口になる可能性もあるのです(101)。
そもそも、どのように乳房が感染症を起こすかは分かっていないんですね。
それでも、「乳頭の傷が乳腺炎の入り口になる」可能性は、現在のところ理論的にマッチしていて、矛盾する情報がないので、信頼できると考えています。
また、「乳頭の傷=効果的な哺乳ができていないサイン」なので、細菌感染しなくても、母乳が外に出られなくなることによって、乳腺炎のリスクは高まると考えられます。
また、乳房の炎症に用いる抗菌薬は、塗り薬の効き目は弱く、経口薬の方がずっと効果が高そうです。
感染性乳腺炎の原則は?
このレビューでは、「時間が経った母乳は細菌の繁殖に好都合になる可能性」についても言及されています。
しかし、もし、お母さんが感染するほどの細菌の勢力拡大が起こりうるなら、それを飲んだ赤ちゃんも次々と感染症になるんじゃないかと思われますが、実際はそんなことはありません(詳しくは後日)。
なので、健康な組織よりも、ダメージを受けた組織の方がバクテリアは感染しやすいと考えられるので、その辺をうろちょろしていた菌が、たまたま炎症を起こした部位(うっ滞性の乳腺炎や乳頭亀裂など)に感染することで、感染性乳腺炎に発展するんじゃないかなと現在のところは解釈しています。
母乳育児は、知識が深くなるほど、試練は小さくなります。
乳房の痛みの原因や対処法については、授乳の痛みからもどうぞ。
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