感染性乳腺炎の原因菌の特徴とは|WHO
初期の乳腺炎に適切な対処ができなかった場合、感染をともなう乳腺炎へと発展することがあります。
この病原体には、どんな特徴があるのでしょうか。
乳腺炎;原因と対処法, World Health Organization
5.感染症
5.1感染源
乳腺炎や膿瘍から見つかる一般的な微生物は、コアグラーゼ陽性の黄色ブドウ球菌と、表皮ブドウ球菌です(74; 100; 102; 103; 117; 119; 120; 140; 170)。
先進国(144)と途上国(184)の両方で、症状がない乳房からも母乳中に微生物が見つかることはよくあります。
その微生物の分布は、しばしば皮膚で見つかるものと非常に似ています(74; 100; 119; 170)。
よって、皮膚のバクテリアの混入を防ぐことが難しいため、細菌学的な研究は複雑なものになっています(160)。
確かな技術で収集したとしても、無菌の母乳が得られることはたった50%しかなく(109)、その他は1 mLあたり0~2500個の”正常な”コロニーが観察されました(183)。
以上より、皮膚から混入したものではないとしても、母乳にバクテリアが含まれていることは必ずしも感染を意味しているわけではありません。
感染症と乳管での単純なコロニゼーションとを見分ける一つの方法としては、バクテリアに特異的な抗体がくっついているかを検出するやり方があります。
尿路感染症と同様に、イムノグロブリンIgAおよびIgGで覆われたバクテリアが母乳中に存在すれば、抗体反応によって感染が起こっていることが分かります(158; 160)。
ただ、多くの場合、そのような検査をする設備は日常的に利用できません。
ブドウ球菌は、どこにでもいるバクテリアの一つです。
WHOのレビューによると、「結核が流行している地域で、結核菌が感染性乳腺炎の原因になった例」など、様々な珍しいケースもあるそうです。
しかし、いずれの場合も、乳腺炎特有の病原体が存在するのではなく、「その辺にいた菌が、何かをきっかけに乳腺に感染すると、感染性乳腺炎へと発展することがある」ということかもしれません。
しかし、私たちは菌にまみれながら生きているのに、通常は、炎症を生じることはありません(母乳だけでなく、人工ミルクにも、赤ちゃんの手にも、どこにでも菌は存在します)。
逆に、授乳を通じてお母さんの常在菌を取り込むことで、赤ちゃんは、病原体の増殖から守られる効果もあります。
では、どういうときに感染へと傾きやすくなるのでしょうか。次の記事から取り上げていきます。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。