双極性障害と母乳育児|授乳OKの薬・NGの薬|LactMed

双極性障害と母乳育児

ブログ読者の方が、医師に「授乳中の投薬治療はしない」と言われ、断乳するか、卒乳まで治療しないかの二択を迫られているということで、調べてみました。

現状、授乳中女性の投薬治療は、赤ちゃんへの薬剤のリスクのみに注目されることが少なくありません。

ただ一つの視点でゼロリスクを求めるのではなく、総合的に考えて、妥当な判断をするために役に立つ情報を、LactMed(※1)より抜粋。

(ごく身近な市販薬でも、全ての薬剤には起こりうる副作用が記載されています。可能性があるからNGではなく、常に、メリットとリスクを秤にかけて選択することが重要です。母親として重要なことは、服用量を守ることと、赤ちゃんの様子に変わったことがないかを観察すること)

 

もし、授乳中に双極性障害の治療経験がある方や、双極性障害と診断された授乳中女性の治療に前向きなクリニックをご存知の方がいらっしゃったら、情報をお寄せいただけると助かります。

 

 

オランザピン(olanzapine)

商品名:ジプレキサ錠、ジプレキサザイディス錠

種類:向精神薬・双極性障害治療薬

 

・第二世代抗精神病薬のシステマティックレビューにおいて、授乳中に用いる第一選択薬(※2)と結論

・乳児の傾眠や発達段階をモニタリングすること(他の抗精神病薬も同時に用いる場合は特に注意)。

 

その他情報

20 mg/日までを母親が服用した場合、母乳中に含まれる濃度は低く、母乳を飲む乳児の血清中濃度は検出不可能なほど低くなる。

ほとんどのケースでは短期的な副作用は報告されていないが、鎮静作用は見られた。

オランザピンに長期間さらされた乳児を経過観察した結果、乳児は通常と同じように発達することが示唆されている(限られた情報※3)。

 

 

クエチアピン(quetiapine)

商品名:セロクエル

種類:抗精神病薬

 

・第二世代抗精神病薬のシステマティックレビューによると、クエチアピンは授乳中の第一選択(※2)あるいは第二選択薬と結論。

・乳児の傾眠・発達段階をモニタリングすること(他の抗精神病薬も同時に使う場合は特に注意)

 

その他情報

400 mg/日までの服用であれば、母乳中に含まれる濃度は低い。

クエチアピンにさらされた乳児を長期間フォローすると、一般的に正常な発達をすることが示唆されている(限られた情報※3)。

 

 

アリピプラゾール(aripiprazole)

商品名:エビリファイ

種類:抗精神病薬

 

限られた情報によると、15 mg/日まで母親が服用する場合、母乳中に出てくる量は少ない。

もっと多くのデータが得られるまでは、別の薬を選んだ方がいいだろう(哺乳する子が新生児や早産児の場合は特に注意)。

アリピプラゾールはプロラクチンの血中濃度を下げうるので、可変的に母乳の生産量に影響を与えるかもしれない(※4)。 

 

 

ラモトリギン(lamotrigine)

商品名:ラミクタール錠

種類:抗てんかん剤

 

ラモトリギン単体を使った場合、乳児の成長や発達に有害な影響は見られない。

ラモトリギンの服用が必要な場合も、多くの乳児には有害な反応は起こらないため、授乳を止める理由にはならない。

鎮痛性の抗けいれん薬や向精神薬との併用は、乳児の鎮静作用や離脱反応を起こしうる。

乳児に無呼吸・発疹・傾眠・哺乳ができなくなる様子などの副作用が出ないか、慎重にモニターし、心配なことがあれば薬剤による毒性を除外するために血清中濃度を測定するべきである。

乳児に発疹が見られたら、原因が確定するまで授乳を止める。

 

その他情報

ラモトリギンを母親が服用している場合、母乳を飲んでいる乳児の血漿中のラモトリギン濃度は比較的高くなる。

新生児はグルクロン酸抱合による薬剤代謝能力が限られているため、血漿濃度が高くなるリスクがある(産後は妊娠前の投与量まで減らさなければ、母乳中の濃度が劇的に上昇しうる)。

報告例はないが、乳児に重い皮膚反応を起こしうる。

 

 

カルバマゼピン (carbamazepine)

商品名:テグレトール

種類:向精神作用性てんかん治療剤・躁状態治療剤

 

乳児は黄疸・傾眠・適切に体重が増えているか・発達段階をモニタリングすること(低月齢の場合・母乳のみで育っている場合・他の抗けいれん薬や向精神薬を使用する場合は特に注意)。

 

その他情報 

母乳中に出てくる薬剤濃度が比較的高い。

母乳を飲んだ赤ちゃんの血清中の薬剤濃度は測定できるほどだが、通常は、抗けいれん薬の治療域より低い。

多くの乳児には有害な反応は見られないが、鎮静作用・哺乳が十分にできないこと・薬剤の離脱反応が見られた例が報告されている。

肝機能障害も3例報告された。

ただ、お腹にいたときの投薬治療の影響や他の薬剤による影響も考えられるため、カルバマゼピンが原因であるとの断定は難しい。

 

 

パルブロ酸(valproic acid)

商品名:デパケン

種類:抗てんかん剤・躁状態治療剤

 

母乳中に含まれるバルプロ酸濃度は低く、母乳を飲む乳児の血清中濃度も低い。

バルプロ酸が原因となった有害反応はこれまで報告されていない。

バルプロ酸だけを使用する場合、乳児の成長や発達に有害な影響はない。

鎮静作用のある抗てんかん剤や向精神薬を一緒に使用する場合は、母乳を飲む乳児に鎮静や離脱反応が起こるかもしれない。

理論的にはパルブロ酸誘発性の肝毒性のリスクがあるため、母親が投薬治療をする間は、黄疸など、肝臓がダメージを受けていることを示すサインがないか、乳児をモニタリングすること。 

 

 

リスペリドン(risperidone)

商品名:リスパダール

種類:抗精神病薬

 

限られた情報によると、6 mg/日までの服用であれば、母乳中に含まれる濃度は低いことが示唆されている。

データが少ないので、他の薬剤を用いた方がいいだろう(特に赤ちゃんが新生児や早産児の場合は注意)

第二世代抗精神病薬のシステマティックレビューでは、データが限られていることと、他の薬剤に比べて母乳中に出てくる量が多いことから、授乳中は第二選択薬とするといいと思われる

 

 

セルトラリン(sertraline)

商品名:ジェイゾロフト

種類:選択的セロトニン再取り込み阻害薬

 

もっとも権威のあるレビュワーたちは、セルトラリンは授乳中の抗うつ薬として、好ましい薬剤の一つであると考えている。

妊娠中や産後に、選択的セロトニン再取り込み阻害薬を服用している母親の場合、母乳育児により大きな困難を感じるかもしれないので、より多くのサポートが必要となるだろう(※5)。

妊娠後期に母親が選択的セロトニン再取り込み阻害薬を服用していた場合は、乳児を人工栄養で育てるより、母乳で育てる方が、新生児適応不良症候群のリスクが低くなる。

 

その他情報

母乳中に出てくるセルトラリン濃度は低いため、母乳を飲む乳児の口に入る量は少なく、通常は乳児の血清中から検出されることはない。

まれに、代謝能力に障害がある早産児の場合、薬剤が体内に蓄積することで、新生児禁断症候群のような徴候を示すことがある。

 

 

炭酸リチウム(lithium carbonate)

商品名:リーマス

種類:躁状態治療剤

リチウムは、薬剤についての多くのリストで授乳禁忌となっているが、絶対的に禁忌とはしていない情報もいくつかある(特に、乳児が月齢2ヶ月以上の場合と、リチウムだけを治療に使う場合)。

リチウムによる投薬治療を受けている母親の母乳を飲んでいる乳児に、毒性や発達の問題を示すサインは見られなかったという報告例は数多く存在する。多くは出産から最長1年間、母親はリチウムを服用しながら授乳を続けていた。

 

脱水症・新生児・早産児のように、排出能力が低い場合は、母乳に含まれるリチウムによって乳児に有害な影響が起こりうることが示唆されている(限られたデータ※3)。

長期的な影響は知られていないが、限られたデータ(※3)によると、乳児の成長や発達に明らかな問題は見られないことが示唆されている。

乳児に落ち着きがない様子・眠りがちな様子・哺乳できなくなった様子が見られたら、ただちに授乳を中断し、診断すること。

 

出産前後の注意点

産まれたばかりの乳児は、産後に胎盤から移行したリチウムによって血清濃度が上昇するかもしれない。 

帝王切開の24-48時間前あるいは自発的な分娩が始まったタイミングで、リチウムの服用を中断し、出産後ただちに妊娠前の推定服用量まで下げることで、出産時の乳児の血清リチウム濃度を最小限にすること。

 

 

ゾテピン(zotepine)

商品名:ロドピン

データ無し

 
 
テグレトール・デパケン・リーマスについては、WHOの情報も利用できます→気分障害と母乳育児|WHO

 

 

※1:LactMed

アメリカ国立医学図書館が提供している、授乳中の女性の治療に用いられる薬剤情報についてのデータベース。毎月アップデートされている。

母乳中や、母乳を飲んだ赤ちゃんの血中にどの程度の濃度で薬剤が含まれるかの情報や、母乳を飲んだ赤ちゃんに起こりうる有害な影響についての情報などが載っている。

全てのデータは、科学論文を参照し、科学的な妥当性と汎用性がチェックされている。

 

※2第一選択薬:効果や安全性などを考えて、まず最初に使うべき薬

※3限られた情報:データが少ないので、ほとんどの子どもに影響はなくても、ごくまれに心配なことが起こるかもしれない

※4可変的に生産量に影響:母乳の生産量が減るかもしれない(個別に、服用量や月齢など、影響が少なくなる条件が存在する可能性あり)

※5母乳育児のサポート:薬そのものの影響というよりは、薬を必要とする状況により育児に困難を抱えやすいことが考えられる。育児中は誰もが気軽にSOSを出せることが重要。

 

※薬剤の商品名と種類は「おくすり110番」を参照

※2017年6月時点での情報です。詳しくはLactMedをご参照ください。

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