WHOによる母乳と服薬のリストを読んで

「母乳育児と母親の薬物療法」WHO必須医薬品リスト第11版を読んだ印象をまとめたいと思います。

母乳育児中の女性に、薬が必要になることも珍しくありません。

身近なところでは、ひどい風邪をひいたり、虫歯の治療で麻酔が必要になったり、生理痛になったり、などなど。

でも、「授乳中なら薬は出せない/治療はできない」と言われるか、「薬を使う間は授乳はやめて/断乳してしまって治療に専念を」と言われることも少なくありません。

「服用中は授乳禁止」って、本当に大変なんです。

ただでさえ楽じゃない毎日にミルクの準備と後片付けと分泌維持のための搾乳の時間が加わってへとへとになったり、

飲ませなくても搾乳しなきゃ母乳は止まると知らずに、治療が終わった後に母乳不足に悩んだり、

搾乳をする余裕はないからと、母乳育児自体を諦めたり、

赤ちゃんが母乳育児で得られていたはずの恩恵がカットされたり、

反対に、授乳できなくなるならと服薬を我慢し、忍耐で乗り越えようとしたり。


<WHOのスタンスは>

栄養法のガイドラインと同じように、常に「母乳育児をすることによるメリットとデメリットのどちらが上回るか」に科学的に注目し、「母親本人が選択できるサポートもすべし」というWHOの判断基準が垣間見えます。

薬のリスクにだけ注目して一方的に母親や子どもに負担を強いるのではなく、治療中も、治療後も、ずっと続く母子関係にも影響を与えうる母乳育児を軽視せずに、母親と子どもにとってベストなところを冷静に模索しようとするバランス感覚も絶妙だと思います。

このリストは必須医薬品というだけあって、日焼け止めからハンセン病まで、広く浅く載っている感じです。

手術時などに使う「酸素」もリストに入っていたり、「ビタミンCサプリメント」のように気軽に使える代表例のようなものも、実は注意が必要だったり、興味深いです。

どんな薬剤でも、重要なことは「使用量は最小限に・使用後は経過観察」なんですね。

ここに授乳と薬剤について、とても大事な話が書いてあります→※リストの使い方


<なぜWHOのリストを翻訳公開しようと思ったか>

理由は次の3つ。

  1. 信頼できる情報源
    たいていの添付説明書には、「授乳禁止」と書いてあるわけですから、それを上回る信頼性がないと、不安です。
    WHOなら聞いたことがある人も多いだろうし、信頼しやすい情報源だと考えました。
  2. 誰でも簡単にアクセスできる情報源
    無料で・アクセスしやすい媒体で・日本語で公開することで、利用できる機会を増やしたいと思いました。
  3. 複数のサイトで情報をカバーし合って、全体を底上げ
    全ての薬剤をカバーできているサイトがないように、このリストも内容が限られています。
    本来は、国家単位で統一され、更新され続ける医療者向けのガイドラインがあればいいのですが、現状は、個人の努力で目的の薬剤情報を探すしかないようです。
    それなら、ラインナップは多いほどいい。

    さらに、根拠が信頼できる情報源が、いくつもネット上を走ることが重要だと考えます。
    それによって、偶然にでも目にして、「授乳中もほとんどの薬は使ってOK」ということに気づく機会が、少しでも増えればと思います。

※WHOのリストは全世界が対象なので、「これはさすがに日本では使う機会がないだろう」と思うような薬剤(疾患)もありますが、実際は日本でも「新規患者がいる/リスクがある/薬剤として使われている」ことが多いことと、海外在住(訪問中)の日本語話者の方も検索できるようにという意図で、マイナーなもの、国内未承認のものも載せています。

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