乳腺炎になった乳房から授乳しても大丈夫?|WHO
昔は、乳腺炎になったら、授乳を中断したり、搾乳して捨てたりするようアドバイスされることも多かったようです。
乳腺炎の症状がある乳房から授乳することについての、WHOによるレビューです。
乳腺炎;原因と対処法, World Health Organization
10. 母乳育児を続けることの安全性
乳腺炎や乳房膿瘍になったときにも授乳を続けることは、お母さん自身の回復と赤ちゃんの健康の両方にとって重要なことです。
乳腺炎になったときに授乳を止めることは、お母さんの回復の役に立ちません(9; 32; 77; 117; 119)。
それどころか、症状を悪化させるリスクがあります(11; 32; 84; 100; 117; 161; 170)。
さらに、精神的な準備ができる前に授乳を止めると、精神的に相当な悩みを抱えることになるかもしれません(54; 166)。
赤ちゃんへの感染リスク
多くの医療従事者は、特に母乳に膿が含まれる場合に、赤ちゃんへの感染リスクがないか心配しています。
そういう医療従事者は、母乳を搾って廃棄することを勧めます(103)。
しかし、数多くの研究によって、黄色ブドウ球菌が含まれている場合でさえ、授乳を続けることは通常安全であることが証明されています(Table 5)(32, 75; 100; 102; 119; 157)。
昔は「お母さんが感染しているかもしれない」母乳を赤ちゃんに飲ませることはNGとされていたようです。
でも、今では、一般的には飲ませても安全であることが証明されているんですね。
このレビュー中では、感染性乳腺炎の原因菌に、赤ちゃんも感染していたケースもあることが伝えられています。
しかし、「とても数が少ないことと、授乳しながら母子両方を抗生物質で治療することで回復できた(良性の結果)ことから、一般的に推奨される母乳育児の中断は正当化できない」としています。
このレビューによると、今から20年ほど前は、「乳房に溜まったままになった母乳は細菌が繁殖しやすくなる」という説が有力だったようで、それが「母乳が腐る」などの迷信へとつながった可能性もあります。
しかし、通常は、黄色ブドウ球菌が含まれていてさえも、赤ちゃんが飲んでも大丈夫な程度のインパクトしかないのですね。
黄色ブドウ球菌も、数が多いと大人でも感染や中毒を起こしますが、赤ちゃんが口にしても安全な程度であれば、その辺にあふれている常在菌へ対処する場合と大差なく、ことさら恐れる必要はないのかもしれません。
※Table 5は原文参照(ブログには載せていません)
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