【レビュー】動画「ふたりでわけあうもの」
11/22の「いい夫婦の日」に向けてP&Gが制作した、すでに340万回再生を超えている話題の動画のレビューを依頼されました。なかなか興味深い内容なので、P&Gによる視聴者へのアンケート結果を抜粋しつつご紹介します。
動画のストーリーは、恋人時代はなんでも分けあっていた二人が、結婚し、子どもができ、いつの間にか家事は妻がメインになっていて…という展開から始まります。
アンケート結果によると、新婚時よりも思いやりのある家事分担ができていない妻側の理由のトップは「子どもが生まれたから」だそうで、このブログも無関係ではありません(なぜ子どもが生まれると家事が妻へ偏り始めるのかという点にも重大な問題が隠れていますが、今は割愛)。
妻の家事負担をテーマにしつつも、夫も共感できるメッセージになっている
もう平成30年になろうとしているのに、夫婦で暮らす家庭では、いまだに妻が家事の多くを負担しているのが現状のようです。
今回の動画はまさにそれをテーマにしているのですが、視聴者へのアンケートによると、妻だけでなく、夫からも高い共感度が得られていることが分かります。
妻が望んでいることは、単に家事の負担を減らすことじゃなかった
家事分担というと、「どのくらいの割合を夫が負担すれば妥当か」という点に注目されがちです。
実際に、当事者は、「家事分担の理想」をどのように考えているのでしょうか。
意外かもしれませんが、回答として多かったトップ3が、「配偶者が家事をしなくても感謝を伝えてくれると嬉しい」「配偶者に自分の気持ちを受け入れてもらいたい/伝えたい」でした。
どのように分担したいかよりも、まずは、「自分の気持ちを分かって欲しい・感謝して欲しい」ということを訴える回答が多かったのです。
気持ちをシェアすることは…難しい
アンケートからは、「やって欲しいと夫に言うと、雰囲気が悪くなるから言えない」「夫に気持ちを言わずにためて爆発して、喧嘩になってしまう」など、「自分の気持ちを伝えること」自体にハードルがあることもうかがえます。
このように、「家事をしてよ」と言った時に夫が不機嫌になることを自分の責任のように感じてしまうことや、動画で触れられていたように妻の「家事をして」という声がSOSではなく自分を責める声に聞こえてしまうことにも重大な問題が隠れていますが、今回は主旨がずれるので置いておくとして、男女問わず、「嫌だ」「辛い」などのネガティブな気持ちもとても大切なものなので、まずは自分が嫌だと感じていることを大切にできると、パートナーが「嫌だ」「辛い」と感じていることも大切にできる第一歩になるのではないかと思います。
実際には動画でのやり取りよりもずっと時間がかかると思いますが、家事という、生きていく上で省略することができないタスクは、”わかりあう”ための強力なトリガーになるかもしれません。
そもそもなぜ家事が負担になるのか
次に、動画で「最も共感できたシーン」のアンケート結果を見てみると…
妻の第1位
妻が家事や仕事、育児に忙しく、「いつもいっぱいいっぱいで」とナレーションが入るシーン
夫の第1位
夫が朝子供を送りながら、「暮らしを続けていくうちに、抱えるものが増えてきて」とナレーションが入るシーン
つまり、妻と夫のどちらも「自分はいつもいっぱいいっぱいで、抱えるものが多くて、本当に大変なんだ」という気持ちが表現されているシーンに、最も共感していることがうかがえます。
確かに、子どもができ、仕事の責任が増え、家のローンが登場しと、年を重ねるにつれて精神的・肉体的な負担が増えていくのが、現代の《スタンダードとされる人生》ですよね。
それは、仕事も家庭も、「やりたくなくても(常識通りに)やらねば」と考える人が多いからかもしれません。
そのように、全てを”常識”通りにこなしつつ、自分のペースで人生を送ることは難しいので、家事は、多くの人が経験するハードルを代表する、キーワードの一つとなっています。
その一方で、家事は生活の充実度にも関係している(好きな食べ物を用意できることや、居心地のいい環境を構築できること自体は、美味しいし、気持ち良い)ので、妻だけでなく、夫も、「自分が担当する家事がゼロになれば幸せな人生」という単純なものでもないでしょう。
動画の「家事分担をJOBからJOYへ」というコピーからは、やり方によっては、家事分担は「単なる負担の押し付け合い」ではなく、「生活の充実度を上げる手段の一つ」になるというニュアンスも受け取れます。
家事をJOYへ、ではなく、家事分担をJOYへ、というのが、この動画の一番のポイントではないかと思います。
夫婦ともに、家事分担をJOBからJOYに変えるために
大前提として、一人の人間が、健やかで前向きな人生を送りながら抱えることができる負担には、限りがあります。
言い方を変えれば、キャパオーバーになるような負担を抱えつつ、家事分担を楽しむことは、なかなか難しいですよね。
もし、家事分担がJOYではなくJOBになっていると感じたら、たとえば、自分たちの生活を占めるタスク一つ一つについて、「自分が」やりたいのか、それとも「世間体として」やるべきだと感じているだけなのか、整理することも有効かもしれません。
この、「自分はどうしたいのか」に敏感になることは、「抱えるものが(意図せず)増えていく」ことによる自分へのダメージと、その結果、しわ寄せがいくパートナーへのダメージを減らす有効な手段の一つじゃないかなと思います。
現実的に、家事分担をJOBからJOYへ変えるためには、自分の気持ちを大切にすることから始まる家族とのコミュニケーションにプラスして、自分が抱える負担の総量を整理し続ける意識もあるといいかもしれません。
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