乳腺炎になりやすい人とは?リスク要因|WHO

リスク要因

乳腺炎の原因として、「食事制限をさぼったから、乳管が細いから、質の悪い母乳が出てるから」などと言われることがあります。

実際に乳腺炎になりやすいのはどんな要因があるのか知っておくと、辛い思いをしながら不要な努力を続けたり、不要に自信を失ったりしなくて済むかもしれません。

 

乳腺炎;原因と対処法, World Health Organization 

4. 母乳のうっ滞

乳腺炎になりやすくなるシチュエーションとしては、母乳過多(107)や、双児かそれ以上の赤ちゃんに授乳していることもあります(118)。

 

4.2 授乳頻度

1952年に、IllingworthとStoneが、赤ちゃんが好きなだけおっぱいを飲むことができる状況下では、乳房の怒張の発生率が半減することを対照実験で公式に証明しました(69)。

その後、いくつもの調査で、授乳時間のスケジューリングが行われた場合、しばしば乳腺炎や乳汁分泌不全へと発展するような乳房の怒張が、より起こりやすくなることが観察されました(14; 73; 168)。

 

その後、数多くの研究者によって、授乳頻度や授乳にかかる時間を制限することと、乳腺炎が関連していることが言及されてきました(5; 8; 44; 49; 94; 100; 110; 139; 140)。

 

多くの女性は、授乳しそこなったり、赤ちゃんが突然夜通し寝るようになったり、授乳間隔が空いたりすると、乳腺炎になりやすいことを経験しています(94; 139)。

 

4.3 乳房への吸着

乳首の亀裂や痛みはしばしば乳腺炎と共に見られます。

乳首の痛みや外傷の原因として最も多いのも、乳房への吸着が下手なことです(177)。よって、乳腺炎と乳首の痛みは同じ器質的な起源を持つので、時に一緒に起こるのでしょう。

また、乳首が痛むために、症状のある乳房からの授乳を避けてしまうことで、母乳のうっ帯や怒張になりやすくなります(44)。

 

4.4 授乳しやすい 方の乳房と効果的な吸てつ

乳腺炎の根底にある原因について、さらなるエビデンスも得られました。どちらの乳房がより頻繁に症状が出るかを調べた結果、器質的な起源による母乳のうっ帯がありました(43; 71; 140)。

多くのお母さんは、特定の側の乳房から授乳する方が、反対の乳房よりも赤ちゃんをおっぱいに吸着させやすいと感じている様子が見られることがあります。

そして、それは乳房への吸着が上手くできていないためであり、吸着が難しいと感じる乳房で、母乳のうっ滞や乳腺炎がより生じやすいことが示唆されています。

 

4.5 他の器質的な要因

舌小帯短縮症の赤ちゃんも臨床的に乳房へ吸着しにくくなることが観察されていて、乳首の痛みや裂傷の原因となっています。

母乳を除去する効率が下がることで、乳腺炎にかかりやすくなるのでしょう(99; 101)。

 

イタリアの産科病院で、おしゃぶりや哺乳瓶を使っていることと、退院時の乳首の痛みに関連性があることが見出されました(21)。

おしゃぶりは乳房への吸着が上手くいかないことや、乳房の怒張(138)や、授乳頻度や授乳にかかる時間が減ってしまうこと(164)とも関連があるでしょう。

よって、おしゃぶりは、母乳を乳房から上手く除去することを妨げ、母乳がうっ滞しやすくなる原因となりえます。

 

締め付けの強い衣服(26; 31; 44; 64; 74; 86; 92; 113)や、うつぶせ寝(5)も、乳腺炎と関連のある器質的要因として、そういう事例があるということが主な理由ではありますが、原因としてありうると考えられています。

 

6. 発症しやすくなる要因

乳腺炎のリスクを増大させるであろう要因としては、数多くの要因が示唆されています。そのいくつかには科学的根拠がありますが、多くは事例でしかありません。

それらは、授乳の技術(乳房へ上手に吸着し、効果的に母乳を除去すること)に比べると重要性は低いようです。

 

出産歴 

初産であることは、いくつかの研究ではリスクファクターとして見出されましたが、(43; 49; 74; 109)、別の研究では否定されました(48;81)。

 

罹患歴 

一度乳腺炎になると、再発しやすくなるという相当のエビデンスがあります(32; 43; 44; 48; 78; 109)。

いくつかの研究によると、40~54%の乳腺炎経験者が、以前にも1回以上乳腺炎になっていました。

これは、乳房への吸着が下手なまま修正されなかった結果である可能性があります。

 

出産 

分娩での合併症は乳腺炎のリスクを増大させます(109)。しかし、オキシトシンを用いた場合はその限りではありません(78)。

 

栄養

塩分の摂りすぎ、脂肪分の摂りすぎ、貧血など、栄養的な要因が乳腺炎の素因になるとしばしば考えられてきましたが、科学的根拠は不確定となっています(5; 31; 105; 106; 171)。

 

ストレスと疲労

お母さん自身のストレスや疲労もしばしば乳腺炎と結び付けて考えられてきましたが、こちらも確固たる科学的根拠はほとんどありません(8; 31; 44; 94; 117; 140)。

 

外傷

あらゆる原因による乳房の外傷は、乳腺組織や乳管にダメージを与えうり、乳腺炎へとつながる可能性があります。

見落としてはいけない、あり得る理由としてはDVがあります。

DVは、全ての社会の多くの女性に波及しており、授乳をしている期間に起こりやすいです(179)。

 

主なポイントをまとめると…

リスク要因として分かっていること

・母乳過多

・多胎児(双子、三つ子など)

・授乳頻度を大人が決めること

・授乳にかかる時間を大人が決めること

・いつも同じ方の手で赤ちゃんを抱っこし、同じ方の乳房ばかり授乳している場合

(乳腺炎になりやすい側と、利き手との相関はない)

・乳頭の亀裂や痛みがあること

・乳房へ上手く吸着させるのが苦手な場合

・赤ちゃんの舌小帯短縮症

 

リスクになりうること

・授乳を飛ばすこと(夜間授乳をしないことを含む)

・おしゃぶりを使っていること

・哺乳瓶を使っていること

・しめつけの強い服装

・うつぶせ寝すること

・乳房への外傷(DVなど)

 

リスクとして科学的根拠がないこと

・塩分の摂り過ぎ

・脂肪分の摂り過ぎ

・ストレスや疲労

 

母乳育児は知識は深く、試練は小さく

乳腺炎のリスクを下げるために効果が期待できることは…

授乳頻度や授乳にかかる時間が妥当であること→授乳パターン

効率よく哺乳できること→ポジショニング

母乳過多授乳の痛みもどうぞ。

 

 

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