乳腺炎の一番の原因「母乳のうっ帯」とはどんなもの?|WHO
母乳のうっ滞とは、「乳房に母乳が停滞していること」を意味しますが、今では、全ての授乳中の女性は、ほとんど常に母乳が溜まっていることが分かっています。
その中で、「問題となるうっ滞」はどうやって起こるのでしょうか。
乳腺炎;原因と対処法, World Health Organization
4. 母乳のうっ滞
母乳のうっ滞は、乳房から効率的に母乳が除去されなかった場合に起こります。
出産直後の乳房の怒張や、赤ちゃんが乳房の一部または全部から母乳を除去しなかったときは、いつでも起こる可能性があります。
母乳のうっ滞の原因
・乳房へうまく吸着できないこと
・効果的でない吸てつ
・授乳の頻度や授乳にかかる時間を制限すること
・乳管の詰まり
など
4.3 乳房への吸着
Gunther (55)が、 効率よく母乳を除去するためには、赤ちゃんがおっぱいに上手く吸着できることが重要だということに初めて気づきました。
その過程は他の研究者たちによってその後さらに調査され(176)、今では臨床的な手法も十分に発展しています(42)。
おっぱいへ上手く吸着できないことは、今では乳腺炎のリスクを高める主要な要因だと考えられています(5; 44)。
確実に上手に吸着させるためのテクニックはAnnex 1(※)とWHO/UNICEF training materials (178)で述べています。
7. 病理と臨床的特徴
7.1 怒張
産後3日目から6日目にかけて、母乳が通常通り「comes in(生産開始)」の状態になったら、乳房はかなり満タンになるでしょう。
これは生理学的なもので、乳児が効果的な吸てつと母乳の除去ができれば、あっという間に解決します。
しかし、怒張に発展する可能性もあり、これら二つの状態がしばしば混同されています。
生理学的な膨満と怒張のどちらも、両方の乳房全体に影響が出ます。しかし、重要な違いがあります(178)。
乳房の膨満は熱く、重く、固く感じます。つやつや光ったり、むくんだり、赤みを帯びたりはしません。
通常、母乳はよく出て、勝手にしたたり落ちてくることもあります。
乳児は吸てつや母乳の除去を簡単に行うことができます。
怒張を伴うと、乳房は母乳と組織液の両方でいっぱいになります。
静脈の流れとリンパ排出が妨げられることで、母乳が流れることができなくなり、乳管と腺房内の圧力が上昇します。
乳房の怒張は、肥大し、膨張し、痛みを伴います。
つやつやと輝き、むくみ、まばらに赤くなるかもしれません。
乳頭は平たく伸びているかもしれません。母乳は簡単に出てこないことが多く、膨張が減るまで乳児が乳房に吸着して吸てつすることは困難かもしれません。
女性は発熱することもあります。しかし、熱は通常24時間以内に治まります。
7.2 乳管の詰まり
臨床的なサインとしては、片方の乳房に痛みを伴うしこりと、しばしば皮膚を覆うまだらな発赤が現れます。
片方の乳房のみ症状が出ます。女性は通常、熱もなく、気分も悪くありません。
固形のものが詰まっているために起こる状態だと考えられていますが、単純に乳房の一部から母乳の除去が非効率的になったことによっても起こるでしょう。
最も重要なポイント
おっぱいへ上手く吸着できないことが、乳腺炎のリスクを高める主要な要因だと考えられている
需要と供給がつり合った状態で母乳が溜まっていても問題にならないですが、様々な原因でほとんど全く外に出られなくなった時に、問題が生じやすいんですね。
母乳不足感を訴える女性が乳腺炎になることも珍しくないようですが、その場合も、まさに、乳房に溜まっている母乳がほとんど外に出られないから、哺乳不足と乳腺炎が両立しうると考えられます。
産後に乳腺炎になりやすい理由
母乳育児の管理方法の未熟さや、効率の悪い哺乳によって、「乳腺炎に発展するほどの母乳のうっ滞」が起こりやすいことも、理由の一つになっていると考えられます→乳腺炎になりやすい時期
産後の乳房の張りのポイント
・膨満は生理的なもので、問題にならない
・怒張は(通常、母乳育児の管理方法がよくないために起こる)乳房トラブル
いつでも、痛みをともなうものは乳房トラブルであり、「やり方を変える必要があるサイン」ということですね。
しこりのポイント
乳管が詰まったときだけでなく、乳房の一部から母乳が上手く除去されなかった時にも起こりうる。
効率の良い哺乳にはコツがある
上手くおっぱいへ吸着させるために「大きなアヒル口で」「ねじれのないように抱っこ」などと言われますが、実際は、それだけではほとんど上手くいきません。
効率の良い哺乳に欠かせないポイント→ポジショニング
※Annex 1は原文参照
上手くおっぱいへ吸着するためのノウハウは、ポジショニングにまとめています。
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