WHOガイドライン「乳幼児の栄養法」を読んだ感想
赤ちゃんが健康に成長するために必要な知識が凝縮されたガイドライン、「乳幼児の栄養法」の翻訳が終わりました。
これを読むと、今までの育児の常識ががらっと変わるかもしれません。
<なぜWHOはわざわざ母乳を“推進”する必要があるのか>
日本は育児後進国なんだなとしみじみ感じました。
不必要に栄養不足になっている、赤ちゃんやお母さんも珍しくないんじゃないかなと心配になります。
一番衝撃的だったのは、「ほとんどのお母さんは母乳だけで育てられる潜在能力がある」という事実です。
日本では、
「母乳が出るかどうかはお母さんの体質による」
「母乳が出ない人もたくさんいるんだから、母乳を推進するのはかわいそう」
「出ない人も母乳に固執するせいで悪影響が出ている」
などと、まことしやかに言われていますよね。
そう思っていませんでしたか?
結論から言うと、日本の多くのお母さんが母乳で育てることが難しくなっているのは、もちろん個人の体質ではなく、医療施設のシステム・知識・スキル不足が大きな原因になっていたのです。
そこで、母乳育児を妨害しない方法で赤ちゃんを管理し、熟練したスキルで母乳育児をサポートするための、“BFHI”という話が出てきます。
<WHOは誰のために母乳を推進している?>
「WHOは発展途上国のために母乳を推進している(=先進国には関係のない話)」という主張を聞いたりしますが、そういう発言をする人たちは、原文を読んだことがないんだろうと思います。
WHOは「世界中全ての人々が可能な限り高い健康水準を手に入れること」を目標にしているので、もちろん発展途上国のこともケアしてあります。
ガイドラインの内容も、日本は全く関係ないなと判断したもの(重度の栄養失調の対処法など)は、割愛しました。
逆に、このブログで翻訳している内容は、全て日本にも関係のある話ということです。
結果的には、ほとんどが先進国にも関係した内容でした。
誰のために母乳を推進しているのか…その答えは、「全ての赤ちゃんとそのお母さんのため」でした。
<WHOは、母乳を飲めない赤ちゃんのことは考えていない?>
「WHOは母乳を飲める赤ちゃんのことしか考えていない」というようなことを言う人も、原文を読んだことがないんだろうと思います。
ガイドライン中には、何が何でも母乳!というような表現は一つもなく、「それぞれの状況で最適な栄養法は何か?」という視点で、常に議論されています。
ガイドラインなので、当然、大多数にあてはまる話→例外的な状況の話という順序で書かれています。
だから、母乳栄養の話が目立つのですね。
また、「世界中でミルクメーカーによる人工ミルクの推進運動が広がった結果、悪影響が出始めていること」が知られていないので、なぜ母乳が適しているかを丁寧に説明してあるのです(このガイドラインは医療従事者向けの教科書として作られたものです)。
<適切な栄養法のカギを握っているのは“お母さん”>
「お母さんが自信を持って育児をすることがどれだけ大切か」という話が何度も出てくるのが少し意外で、印象的でした。
日本では、夫も実母も義母も身近な専門家も、誰も正しい知識と励ましで支えてくれる人がいない中、とても頼りない「赤ちゃん」という生き物を育てていかなくてはいけないお母さんもたくさんいるでしょう。
WHOによれば、「母乳育児がうまくいくかどうかは、お母さんがどれだけ自信を失わずにいられるかどうかにかかっている」、という側面も大きいようです。
日本では、お母さんにダメ出しをしたり、自信を失うようなこと(母乳が足りていない等)を言ったりする専門家はとても多いですが、これについてもWHOはばっさりと切り捨てています。
迷信的アドバイスに惑わされずに、自信を持って最適なやり方で子どもを育てるための秘訣が、ここにあります↓
ここに書かれている内容が、「なんだ、そんなこともう知ってるよ」と皆に思われる時代が早く来ることを願います!
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