“差し乳”は医学的には存在しない

差し乳とは、

「普段は空っぽだけど、赤ちゃんが哺乳し始めると、製造工場のスイッチがオンになって、母乳が超特急で作られ始める」

タイプのおっぱいだと思っていませんか?

これ、実は違ったようです。

国際認定ラクテーションコンサルタントの方によって、授乳の仕方についてのエビデンスをまとめられた論文に、本当のことが書いてありました。

<母乳の生産と溜められる量>

最近まで、「お母さんが授乳や搾乳を始めると、プロラクチンが分泌されることで、授乳中に母乳の生産の大部分が行われる」と信じられていた。

また、授乳と授乳の間には、脂肪の少ない母乳が少量作られ、乳輪部分にある乳管洞に前乳として集まっているとも考えられていた。

しかし、この考え方は研究によって大きく変わった。

母乳は授乳中に生産されるのではなく、むしろ、24時間、生産し続けていることが明らかになった。

授乳の合間に作られる母乳の量は、乳房に溜まっている母乳量によって変わる。

つまり、乳房が母乳でいっぱいの時は、母乳の生産スピードは遅くなり、逆に乳房が空になるほど、生産スピードは速くなる。

<原文>

Lisa Marasco, BA, IBCLC and Jan Barger, MA, RN, IBCLC. Examining the Evidence for Cue feeding of Breastfed Infants

「最近までこう信じられていた」と言っても、この論文が書かれたのは、もう20年近く前のことです。

もちろん授乳中も母乳は生産されているようですが、赤ちゃんが飲んでいる大部分は、「もともと乳房に溜まっていた母乳」だったのです。

おっぱいは、ふにゃふにゃ・ぺらんぺらんだろうと、赤ちゃんに授乳した直後だろうと、完全に空っぽになることはないそうです(WHOによると、2-3割は飲み残すのが通常)

「乳房が空になるほど母乳の生産スピードが上がる」ということは、「まだ張ってないから時間を空けなきゃ」なんてことをしていると、本当はすでに溜まっているので、どんどん母乳の生産スピードが落ちてしまうということなんですね。

結論としては、普段から胸は張っていなくても、母乳は溜まっているのです。

(母乳を溜められるmaxの量は、人によって全然!違う)

人類は皆、溜まり乳だったのです。

じゃぁなぜ差し乳という説が生まれたのか?や、私って差し乳なのかな?と不安になってしまう原因はこちら↓

「差し乳」で不安になる原因を解説します

多くのお母さんが経験する母乳不足感

一般的に、赤ちゃんの様子で困ったことがあると、何かとおっぱいのせいにされがちです。

そのため、たとえ必要以上に母乳が作られていたとしても、「母乳が出ていない」と感じることも珍しくありません。

母乳育児を軌道に乗せるために必要なのは、運や根性ではなく、知識とスキルです。

張らないおっぱい・少ない搾乳や直母量に不安を感じたら、母乳不足感の知識が、迷信を撃退する助けになります。

増えない体重・多すぎる授乳回数・長すぎる授乳・おっぱいの痛みを解決するには、ポジショニングのスキルが欠かせません。

2017/4/16更新

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