ビタミンDだけたくさんとっても意味がない?

ビタミンDの活性化

「くる病と母乳に関連がある」と主張する論文では、ビタミンDは、「たっぷり摂るほど、健康になれる」と考えられているようです。

一方で、「ビタミンDの研究者」たちは、ビタミンDのことは、その働きから、ホルモン扱いしています。

どういうことなのか、これから、ビタミンDについての最新情報を紹介していきたいと思います。

まず、ビタミンDには、主に3つの形態があります1, 2

くる病研究を理解するために重要なので、ここに簡単にまとめます。

①ビタミンD(vitamin D)

誰もがイメージするビタミンD。

紫外線が肌に当たると生成する。

できたビタミンDは、脂肪細胞に取り込まれ、後に必要になるまで、皮下脂肪や大網の脂肪組織(いわゆる内臓脂肪)に貯蔵される 。

※では体脂肪が多い方が体内のビタミンDが増えるのか?と思うが、BMIが高いほど、ビタミンD血中濃度は低くなることが、いくつもの研究で示されている(しかし体脂肪が多い人ほど骨がもろくなるなどの相関はなさそうで、骨とビタミンD血中濃度との関係は、そう単純ではないようだ)

脂肪細胞に取り込まれたビタミンDの半減期は、2ヶ月ほどととても長く、しばらく日光を浴びられなくても、不足しないようになっている。

サプリメントや乳児用ミルクに含まれているのも、この形。

この形のままでは、生体内で機能しない

ほとんど何もせず過ごすので、今後、このブログでは「休眠ビタミンD」と呼ぶ。

休眠ビタミンD

②25ヒドロキシビタミンD(25-hydroxyvitamin D、25(OH)D)

主に肝臓で、25番目の炭素骨格に水酸基をつけてもらって、一つ進化した状態。

血液中を循環しているものの中で、最も数が多いと言われている。

血清中の半減期は15日ほど。

血液中を循環しながら多くの時間を過ごし、ほとんどは使われずに代謝され、体の外に排出される。

必要になったときに余裕を持って対応できるように、アイドリングしている状態。

ほんの一部、呼ばれたものだけが試合に出るシステムなので、このブログでは、補欠ビタミンDと呼ぶ。

補欠ビタミンD

③1,25ジヒドロキシビタミンD (1,25-dihydroxyvitamin D、1,25(OH)₂D)

補欠ビタミンDの中からさらにほんの一部が、主に腎臓で、1番目の炭素骨格にも水酸基を付けてもらった最終進化形。

血液中に流れている数としては、補欠ビタミンD(nMオーダー)の100分の1〜1000分の1程度のごくわずか(pMオーダー)しか存在しないが、高い生理活性を持っている。

半減期は3.5〜21時間と短く、血中濃度が大きく増減しないように、厳密にコントロールされている。

これでやっと機能できる形になったので、このブログでは活性型ビタミンDと呼ぶ。

活性型ビタミンD

活性型ビタミンDは、必ず、ビタミンD専用の受容体を介して作用する。
(ビタミンD受容体は、ステロイドホルモンの核受容体ファミリーの一つで、転写因子)

つまり、活性型ビタミンDが受容体にくっつくと、直接DNAを読み込んで、生命活動に必要な物質を作ることができるようになるのだ。

免疫など、いくつものメカニズムで、重要な役割をはたしている。

活性型ビタミンDが作れる物質の種類は、細胞によって違うが、同じ細胞でも、DNAのどこにくっつくかによって、変わる。

たとえば、ヒトのリンパ芽球系細胞のDNAで、2776ヶ所もの結合部位(!)と、229の遺伝子発現(!!)が見つかっている。

活性型ビタミンDだけで、数百種類もの物質を作ることができるということだ。すごい。

まとめ

日光浴で合成したものや、サプリなどから摂取した休眠ビタミンDは、多くの時間を眠ってすごす。

そして、その一部は補欠ビタミンDとしてしばらく体内を循環し、さらにごく一部が、活性型ビタミンDとしてDNAを読み込む手助けをしている。

ということで、ビタミンDは、少なすぎると生命活動に必要な物質を作れなくなるので、健康を維持できない。

でも、多すぎても、細胞毒性があったり、過剰に物質を作ったりしてしまうので、やはり健康を維持できない。

(ビタミンDサプリのメリットやデメリットは、まだよく分かっていないのが現状)

続いての話は…

今は、ビタミンD血中濃度は高い方がベターとされています。

では、そもそも、ビタミンD血中濃度が高いことは、何を意味するのでしょうか。

次は、ビタミンD血中濃度に注目する全ての専門家に知って欲しい、これまでの測定値に隠れていた意外な事実について、取り上げます。

くる病とビタミンDのシリーズはこちらから読めます。

主な参考文献

Bikle, Daniel D. “Vitamin D metabolism, mechanism of action, and clinical applications.” Chemistry & biology 21.3 (2014): 319-329.

Tsiaras, William G., and Martin A. Weinstock. “Factors influencing vitamin D status.” Acta dermato-venereologica 91.2 (2011): 115-124.

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