なぜ授乳直後も泣く・いつまでもおっぱいを離そうとしないことがあるのか

母乳育児をしていると、赤ちゃんがおっぱいにしがみつくように、いつまでもいつまでも飲み続けることや、授乳してもう十分だろうと切り上げようとしたら、まだ足りないとばかりに泣き始めることがあります。

すると、聞こえてくるのが「おっぱい足りないんじゃない?」という迷信的アドバイス(!)です。

 

本当は、赤ちゃんは何をしているのでしょうか?(前回までの記事の続き)

 

<赤ちゃんの泣きと満腹>

著名な母乳育児の研究者 Michael Woolridge氏 によるコメント;

「赤ちゃんの泣きをどう解釈するか」は、その文化で信じられていることによって変わる。

 

満腹だ・満足したという感覚は、適切に栄養が補われた時に感じられるものである。

食欲のコントロールは、カロリー、特に脂肪分が影響しているようだ。

 

一般的に、「量が多いこと」が、重要な要因だと思われていることには、疑問がある。

例えば、授乳した後も赤ちゃんが落ち着かないと、「満足できるほどの母乳量がなかったのだ」と思われている。

そうではなく、ほんの少しなんだけど、赤ちゃんが脂肪分あるいはカロリーとしての摂取量が不足したので、満腹にはなれなかったのだろう。

 

<人工栄養が母乳栄養と決定的に違うこと>

●人工ミルク

カロリー密度が均一。

栄養素の摂取量と飲んだ量が比例する。

 

●母乳

授乳している間に、量自体は減っていく一方で、カロリー密度が上がっていく

カロリーの摂取量は、飲んだ量に対して曲線的に上昇する。

つまり、授乳が終盤に近づくと、赤ちゃんが摂取するカロリーは、飲んだ母乳の量に対して、あべこべになる。

 

授乳時間を制限して、脂肪分が十分に摂取できず(不相応にカロリー制限することになり)、赤ちゃんが泣いてしまうのを見た大人たちは、「授乳の仕方が原因」とは思わず、「お母さんの体」を非難することになるだろう。

 

<原文>

Lisa Marasco, BA, IBCLC and Jan Barger, MA, RN, IBCLC. Examining the Evidence for Cue feeding of Breastfed Infants

 

一番重要なポイント

ミルクは、カロリー摂取量と飲んだ量が比例する

母乳は、授乳が後半になると、カロリー摂取量と飲んだ量があべこべになる

 


「直母量」には出てこない母乳の底力!

直母量を量ってみると、長時間授乳しても、時間を決めて授乳を切り上げても、大して変わらないことが一般的なようです。

 

でも、赤ちゃんは、そのわずかな差、例えばたった10 gの母乳を必要としていたのかもしれないのです。

ミルクを基準にしていると、「たった10 gなんて」と思ってしまいますが、母乳の場合は「濃密な10 g」なわけなので、赤ちゃんにとっては、とても重大なものなのですね。

 

あと10 gだけ飲めれば満足できたのに、「決めた時間授乳しても満足できないなんて、母乳が十分に出ていないんだわ」と勘違いしてミルクを足してしまうお母さんは、ぞろぞろいるんじゃないかなと思います。

 

つまり、よくある疑問とその答えは、こうなります。

Q. いつまでもおっぱいにしがみつく場合はどうすればいいの?

A. そのまま飲ませてあげていいのです。

 

Q. 授乳直後にも欲しがって泣く場合はどうすればいいの?

A. もう一度、(反対の)おっぱいを差し出していいのです。

 


注意点

●新生児期や、低出生体重で産まれた赤ちゃん

寝ながら飲む場合など、授乳時間が1時間など、かなり長くなることがあります。

お母さんの負担を減らすために、タグポジショニングから、楽な授乳姿勢を探してみてください。

 

●毎回の授乳が30分以上かかる場合、あるいは、乳首に痛みがある場合

おっぱいのくわえかたが下手な可能性があります。

おっぱいへの吸着の仕方が悪いと、いくら長時間授乳しても哺乳量が増えません。→※授乳の間隔がこういう場合は黄色信号です

 

●赤ちゃんの体重が激増している場合や、しょっちゅう緑のウンチが出ている場合

母乳過多のため、脂肪分の少ない前乳しか飲めずに、満足感が得られにくくなっている可能性があります。

母乳の生産量をちょうどよくすることが根本解決になるかもしれません→※母乳過多・過飲症候群・乳糖不耐症まとめ

多くのお母さんが経験する母乳不足感

一般的に、赤ちゃんの様子で困ったことがあると、何かとおっぱいのせいにされがちです。

そのため、たとえ必要以上に母乳が作られていたとしても、「母乳が出ていない」と感じることも珍しくありません。

母乳育児を軌道に乗せるために必要なのは、運や根性ではなく、知識とスキルです。

張らないおっぱい・少ない搾乳や直母量に不安を感じたら、母乳不足感の知識が、迷信を撃退する助けになります。

増えない体重・多すぎる授乳回数・長すぎる授乳・おっぱいの痛みを解決するには、ポジショニングのスキルが欠かせません。

書籍「ちょっと理系な育児(母乳育児編)」には、母乳育児の悩みを根本解決させるための情報がまとめられています。

2017/5/12更新

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コメント

    • サヤカ
    • 2016年 6月 30日

    こんにちは。今回第2子を帝王切開で出産、退院後は母乳で育てています。明日で1ヶ月です。
    生後28日(昨日)にこちらのブログを知り、目から鱗が出る思いで拝読しました!新生児に関する記事はほぼ読んだつもりです。
    元々、自分のやることに自信がなかなか持てず、これでいいのか不安に思う気持ちが強くなりがちです…。早く自信をもって、子どもにおおらかに接するようになりたいと思っています。

    赤ちゃんが自ら吸うのをやめるまで飲ませることに関してです。
    吸い始めてから10分前後でうとうと眠りかけのような状態になりますが、乳首を離すことはなく、目を閉じだいぶ休みながら小さく(弱々しく?)口を動かしくわえ続けます。先程は45分もくわえていて、口がすぼまってくわえ方が浅くなったため、指を入れて口を外しました。その後直ちに欲しがりはしませんでしたが、15分後に欲しがりました。
    ここまで長くくわえ続けることはあまりありませんが、いつも25分ほどはくわえ続けます。アタッチメントやポジショニングはこちらのブログの通りになっているとは思いますが、特に眠りかけのころくわえ方が段々浅くなっているような印象があります。
    私は胸が大きく、乳輪は大きいけれど乳首は小さく短めで、赤ちゃんが吸っているあいだに唇からずれやすいと母乳マッサージの先生に言われたことがあります。

    もし、途中で「くわえ方が浅くなったかも?」と思ったら、その時点でくわえさせ直した方がいいのでしょうか?何度もくわえさせ直しても、赤ちゃんは脂肪分の多い母乳を飲めるのでしょうか?
    また、眠りかけながら弱々しくでも口を動かしていれば、赤ちゃんはおっぱいを飲んでいると判断していいのでしょうか?

    長くなって申し訳ありません。ご回答いただけると嬉しいです。よろしくお願いします。

    • コメントありがとうございます。いろいろ不安に思うことは何もおかしくないですが、その不安を少しでも減らすお手伝いができれば幸いです。

      さっそく、考えられることを書いてみますね。
      ●寝ながら飲む
      →特に産まれて間もない赤ちゃんにはよくあることです。寝ながらアムアムしているのは、母乳を飲んでいるんだと思います。生後半年くらいになると、おっぱいをくわえてなくても寝ぼけて(?)アムアムする様子が出てくるかもしれません。

      ●吸着が浅くなる
      →時間が経つにつれ、ポジショニングがずれているのかもしれないですね?わざわざ口を外さなくても、ポジショニングを調整すれば、吸着も自然と改善するかもしれません。
      それで改善しなければ、口を外してやり直してもいいと思います。月齢が進めば、多少浅くても、痛みなどなければ気にしなくていいかもしれません。

      ●後乳について
      →赤ちゃん主導の授乳をしていて、母乳過多などのトラブルもなければ、どんな授乳パターンになろうと必要な脂肪分をとれるようなので、心配無用だと思います!

        • サヤカ
        • 2016年 6月 30日

        早速のご回答ありがとうございます!こんなに早くお返事いただけるなんて…。
        こちらの情報に不十分なところもあったと思いますが、色々考えてくださってありがとうございます。

        ●寝ながら飲む
        赤ちゃんは寝ながらでも口を動かして母乳を飲めるのですね。すごい能力ですね(笑)
        あまりに動かない時間が長いと、もう満足できたのかな?外してもいいのかな?と判断に迷ってしまって…。
        でも、乳首を外したときに口の端に母乳が見える事もあったので、弱々しい口の動きでも母乳は出ていた、と思うことにします。

        そのためには長時間の吸着でもこちらが疲れないよう、より楽な姿勢をとるべきかもしれませんね。
        吸着が浅くなるのが気になって、ここ二日ほどはほとんど交差横抱きで、あげるおっぱい側の手で胸を支えつつ口元を確認しながらの授乳です。背もたれがないので長く吸着されるとしんどくなってきてしまって…。
        今週で里帰り先から自宅に戻るので、慣れた家で気兼ねなく試行錯誤してみようと思います。

        ●ポジショニング
        確かに、吸いはじめは正しいポジショニングが出来ているのに、途中で顔が斜めを向いてくることもありました…。
        ポジショニングの修正で様子を見て、乳首に痛みがあるようならやり直すなど、臨機応変にやってみます。

        ●後乳
        赤ちゃん主動の授乳を心がけるようになってから、授乳の頻度は8回→16回ほどと倍近くに増えましたが、おっぱいが詰まって痛いトラブルは少なくなりました。
        産院でも桶谷でも、乳首が痛まないよう3分×2、5分×2の授乳を指導されていましたが、後乳を飲んでもらえるよう赤ちゃんのペースに付き合ってみます。

        中々上手に吸着させてあげられない…と落ち込んでいたとき、こちらのブログの「乳首は上顎に向かって」と「乳輪は上唇より下唇側が少なくなるように」の説明が、ストンと納得できて憑き物が落ちたようだったんです。
        このやり方を信じてがんばってみます!

    • いちご
    • 2016年 9月 03日

    コメント内容は以下に移動させていただきました↓
    いつまでも飲み続ける・毎回のように吐く(2ヶ月)

    ●キーワード
    おっぱいをなかなか離さない
    時間を決めて切り上げると大泣きする
    必ずといっていいほど吐く
    赤ちゃん主導の授乳をしていいのか迷う

    • ふりるうさぎ
    • 2017年 4月 24日

    はじめまして。
    授乳について調べていてこちらにたどり着きました。
    ちょうど3ヶ月になる女の子がいます。

    出生時からやや大きめで、3635g
    現在3ヶ月ちょうどで7700gです。

    出生時より完全母乳ですが、夜など添い乳をしていると1時間〜1時間半も飲み続けています。
    チュパチュパ遊んでいるわけではなく、ゴクンゴクンと飲み続けているのです。
    幸い、授乳時間が長い以外はこちらの乳首などのトラブルなどもなく、子どもも吐いたりするわけでもないのですが…

    途中でやめさせなくて大丈夫なのでしょうか?
    よろしくお願いいたします。

    • 体重の増え方が大きすぎるような、母乳を飲み過ぎているような気がして心配されているんですね。
      母乳過多でなければ、寝ながら1時間以上飲み続けることは問題にならないと思われます。

      コメントからは、哺乳量や成長パターンに問題があるかどうか推測できないのですが、身長-体重曲線をチェックされてみるのはいかがでしょうか。

    • mis
    • 2017年 7月 11日

    はじめまして!
    入院中にこちらのサイトにたどり着き、大変お世話になっています。
    こちらの記事への書き込みで合っているかわからないのですが、相談させて下さい。

    息子は現在2ヶ月になりますが、退院後2週間ほどは混合でしたが、現在は預ける時以外は完母です。
    1ヶ月検診での体重増加は問題ありませんでした。
    出産した病院の母乳外来で「母乳はフルコース料理と同じで、飲ませ始めから10〜15分程で前菜からデザートのように濃度が変わります。フルコースを全て飲ませるためにも、区切るのであれば片側10〜15分で区切ってもう片方を飲ませて下さい」と指導され、そのように飲ませてきました。
    左右それぞれ10分15分ずつ、あるいは数分で離すまで飲ませた後は、寝てしまう時もご機嫌で動いている時もあります。
    ゲップがちょっと苦手なようで、溢乳します(吐くわけではありません)。
    ところが、自治体の助産師訪問で「それは飲ませすぎかもしれない。両胸に力強い吸啜をさせて刺激を与えるため、右5分、左手10分、右5分で飲ませて下さい」と言われ、この方法で直母量を測定したところ、120gほどでした。
    私としては、吸啜の刺激を考えるなら授乳を始める側を毎回交互にすればいいと思いますし、こちらのサイトにある「片乳をふにゃふにゃになるまで飲ませる」と母乳外来の「フルコース全て飲ませる」がイコールであると考えているので、今まで通りの方法で授乳したいところですが、自治体の助産師さんに「飲ませすぎかもしれない。飲んだ後うなるでしょ?」と言われたことが気にかかっています。
    確かによくうなるのです……
    両胸15分は飲ませすぎということでしょうか。
    授乳方法について、アドバイスいただければ幸いです。

      • mis
      • 2017年 7月 11日

      追記します。
      授乳の間隔ですが、夜間は長くて4・5時間、昼間は1時間半〜3時間です。
      いずれも、泣いた時にオムツや授乳を検討し、色々やっても泣き止まず最終的に空腹と判断したら授乳する…といったところです。
      (夜間4時間空いてしまうような時は、有無を言わさず授乳です)

    • はじめまして。医療スタッフによってアドバイスが違うので、どうすればいいか迷っていらっしゃるんですね。
      結論としては、授乳時間を計って切り上げなくても大丈夫だし、大人が哺乳量をコントロールすることは不可能なので、赤ちゃん任せにしていいんじゃないかなと思います。

      また、赤ちゃんが「うなる」とのことですが、母乳過多の可能性はないでしょうか。
      もしそうだとしたら、授乳の仕方を工夫するだけで解決する可能性があるので、よければチェックしてみてくださいね。

        • mis
        • 2017年 7月 11日

        早速の返信、ありがとうございます。
        過飲症候群については、便通の頻度など当てはまる部分と当てはまらない部分とありますが、おそらくそうではないかと…
        片乳を飲ませきる方向でやってみようかと思います。
        飲みきったという判断は、子どもが自分から口を離すまでということでよいでしょうか?

        • 過飲症候群のサインに当てはまらない点はありつつも、可能性がありそうなんですね。
          おっしゃる通り、口を離すまで飲ませ、1-2時間以内にまた欲しがればさっきと同じ方を飲ませる、という感じです。
          母乳の余り具合によって、やり方は最適化する必要があるので、迷ったら母乳過多についての記事をいくつかご覧になってみてくださいね。

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