「母乳育児が軌道に乗るには100日かかる」は本当だった

「赤ちゃんが産まれたら、自然に母乳育児ができるイメージは大間違い」って知らなかったよ!…とへこんでいるお母さんは少なくないかもしれません。

出産のダメージが残る、このしんどい時期に、お母さんの体の中では、こんなことが起こっています(前回までの記事の続き)

 

妊娠中に、母乳を分泌する細胞がたくさん作られ、必要な分と、少しだけ余分な分(必要に応じて加勢するため)を効率的にキープしたまま、残りは産後数カ月で少しずつ減っていくようです。

これは退行と呼ばれる、自然なプロセスです。

 

産後3カ月程度の間は、「内分泌制御」が優勢になり、プロラクチンの量が、母乳の生産量に関わっていると知られています。

そして、産後3カ月を過ぎる頃からは、「自己分泌(局所)制御」が主な役割を引き継いでいくようです。

 

つまり、内分泌制御の期間に、十分な数のプロラクチン受容体をきちんと育てておくことが、長期授乳の成功に影響すると明らかになりました。

受容体が育つために必要な刺激は、授乳を頻繁にすればするほど大きくなることが明らかになっています。

 

<原文>

Lisa Marasco, BA, IBCLC and Jan Barger, MA, RN, IBCLC. Examining the Evidence for Cue feeding of Breastfed Infants

 

つまり、簡単に言うと、母乳の生産システムをうまく立ち上げるには、産後3カ月で次の2つができていることが重要なのです。

 

●産後100日でするべきこと!●

①母乳の分泌細胞の数をちょうどいい数にしておくこと

②プロラクチン受容体を育てておくこと

 


①分泌細胞の数は、産後が一番多い!?

最初は、母乳を分泌する細胞はかなり多めに準備してあるんですね。

それは、もしかすると赤ちゃんは双子かもしれないし、予期せぬ事態で片方のおっぱいしか授乳できないかもしれないし、何かあっても少なくとも赤ちゃんが飢えることだけはないように、リスク回避するための生物の仕組みなのでしょう。

 

そこで、産後、赤ちゃんが求めるがままに授乳していると、将来、余分に必要になることも考えて、「今回の赤ちゃんはこのくらい細胞があれば大丈夫ね」と、いらない分は消えてしまうのです。

 

つまり、産後、医学的根拠のないミルク補足をしていると、赤ちゃんが母乳を飲む量が減ってしまうので、「今回の赤ちゃんはかなり小食なのね」と分泌細胞がガツンと減ってしまうかもしれません。

 

反対に、母乳が出過ぎる人(過分泌)が、授乳だけでなく、「すっきりさせるための搾乳」もしていたら、「今回の赤ちゃんはかなり飲むのね」と、分泌細胞もかなりの数をキープされてしまうかもしれません(=過分泌も治りにくくなるかも)。

 

母乳の重要と供給をちょうどいいものにするためには、不要なミルク補足はしないことと、「赤ちゃん主導の授乳」をすることが不可欠なのですね。

 

②プロラクチンをキャッチするための受容体は増えていく!?

母乳を作るホルモン「プロラクチン」は、母乳を作るために重要ですが、そもそもそれをキャッチする受容体がないと、母乳の分泌細胞は母乳を作ることができないのです。

プロラクチン受容体の育て方(とても重要!)は、こちら→※産後に頻回授乳を頑張っておけば、あとで楽ができる!

 

母乳育児を軌道に乗せるために必要なのは、体質よりも知識とスキル! 

母乳の生産量をちょうどよくする授乳方法や、効率よく母乳を飲むためのスキルを身につけるには、ポジショニングが欠かせません。

母乳が増えたり減ったりする仕組みについては母乳の生理学もどうぞ。

書籍「ちょっと理系な育児(母乳育児編)」にも、母乳育児の立ち上がりやトラブル回避のための情報がまとめられています。

 

2017/5/12更新

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コメント

    • natsuko
    • 2015年 12月 17日

    初めまして。私はいま、3ヶ月の男の子を育児中です。出産した病院では、授乳指導をしていただきましたが、退院直前で8g飲ませるのがやっとでした。退院時、ブドウ糖をもらいましたが、「ブドウ糖は栄養じゃないから、ミルクを足した方がいいかもしれない。足すかどうかはお母さんの判断に任せます」と言われ、どのくらい足せばいいかも分からず、日々試行錯誤しながら足していました。日によってまちまちでしたが平均で1日300ccくらいです。順調に体重は増えていました。ただ、今振り返ってみると、ミルクに頼りすぎて母乳の回数が少なすぎました。生後50日を目前にしてこちらのブログに出会い、今まで疑問に思っていたことが全てクリアになったような衝撃を受けました。それからは、100日まで頑張ってみよう、と赤ちゃん主導の授乳をに切り替え、母乳のみを与えるようにしてきました。
    しかしその後体重が少し減ってしまい、そのまま増えないのが気がかりで、生後76日目ごろから再びミルクを足すことにしました。1日に120〜260ccくらいを足していました。生後93日め自宅で計ると4キロしかなく、成長曲線から外れていることに気づき、焦り、ミルク量を増やしました。以後1日300〜400ccを足しています。生後99日めで4.2キロに増えたので、このくらいは足さないといけないのかと思っているのですが…
    生後101日めの今日はおっぱいをくわえさせても泣いて飲んでくれないときがあり、とても悲しい気持ちになりました。できればミルクに頼らなくてもいいように母乳量を増やしたいのですが、今からでも増えるでしょうか?食事や飲み物、アタッチメントなどは気をつけているつもりです。

    出生時2792g
    2日目 2616g
    5日目 2686g
    (ここからミルクを足す)
    14日目 2970g
    35日目 3690g
    50日目 4100g
    (ここから母乳のみ)
    55日目 およそ3800g
    62日目 3798g
    76日目 およそ3800g
    (ここから再びミルクを足す)
    93日目 およそ4000g
    99日目 およそ4200g

    母乳をあげている時は以下のような状態です。

    ・寝落ちすることや半分寝ながら飲むことが多い
    ・おっぱいをくわえているのに泣く、体を反らせることが時々ある
    ・毎回30分以上、長いときは1時間かかる
    ・授乳間隔は短くて1時間〜長くて2.5時間(ただし夜はよく寝ます)

    • 初めての育児で、頼れる人もなく一人で試行錯誤される日々は不安だったことと思います。授乳パターンの改善、体重チェックの継続、成長曲線に問題があることに気付いてミルク補足を判断されたことなど、精一杯ベストの選択をされていると思います。
      3ヶ月健診はあったでしょうか?なければ、小児科を受診して、健康チェックもしてもらうといいと思います。赤ちゃんの状態を優先しましょう。

      ●授乳について
      気をつけていらっしゃるとのことですが、授乳時間から、やはりうまくアタッチメントできずに、哺乳効率が悪いままの可能性があります。ポジショニングの記事はご覧になられてますか?読んで分からない点があれば、コメント下さい。
      まずは、体重曲線をV字回復させることと、ポジショニングの習得に集中されるといいんじゃないかと思います。母乳育児が軌道に乗るまでは1週間おきに、軌道に乗ったら1ヶ月おきに体重を量っていくと、問題があっても早く気づくことができます。

      その2つがクリアできれば、ミルクを減らしていって大丈夫だと思います。出生体重から成長曲線を予想すると、たとえば月齢5ヶ月で6kg、あるいは6ヶ月で6.5kgくらいあればひとまず安心な感じでしょうか。ただ、どんなに体重が順調に増えていても、ミルクはいきなりゼロにせずに、体重変化に問題ないことを確認しながら、毎日少しずつ減らしていきます。

      授乳中に泣くのは、寝ぐずりなどいろんな理由が考えられるので、不安に思わなくて大丈夫です!みんな泣きます!

      お母さんの食事は、食べたいものを食べてくださいね。家事は二の次で、出来るだけ赤ちゃんを抱っこしっぱなしにして、ゆったりとお過ごしください。授乳中も、音楽をかけたりラジオを聴いたり楽しいテレビを見たりなど、リラックスできる方法を探してみるのもいいかもしれません。初めての母乳育児は、みんな下手なものなので、焦らず、問題を一つ一つクリアして行きましょうね。

        • natsuko
        • 2015年 12月 18日

        ありがとうございます。すっと気持ちが楽になりました。

        ポジショニングの記事、更新されていたのに気づいていなくて読んでませんでした!縦抱きのV字姿勢ができてなくて、悪い姿勢の例そのままでした…。これから気持ちを新たにポジショニングの習得に励みます。
        赤ちゃんの健康と体重のチェックを欠かさず、ゆったりした気持ちで授乳したいと思います。本当にありがとうございました!

      • 新たな改善点に気づけたのですね。早く授乳が楽になるといいですね。
        ひとまず、年内に一度小児科を受診されることをオススメします。
        今後、何かおかしいな、不安だなと思ったら、またコメントください。
        (※すぐには返信できないことが多いので、緊急の相談は身近な人にしてくださいね)

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