母乳の鉄分は少数精鋭!母乳のビタミン・ミネラル
母乳育児をしていると、
「母乳に含まれるビタミンD濃度は低いから、カルシウムが十分に吸収できずにくる病になりやすい」という迷信や、
「母乳に含まれる鉄分濃度は低いから、鉄欠乏性貧血になりやすい」という迷信を信じる人から、ミルクを飲ませるように勧められることもあります。
迷信をうまくスルーし、自信を持って母乳育児を続けるために、いくつか知識を見てみましょう。
WHOガイドライン「乳幼児の栄養法」
第2章 母乳育児の生理学基礎
2.1 母乳の成分
<ビタミン・ミネラル>
母親自身が欠乏症でなければ、通常、母乳には乳児にとって十分なビタミンが含まれます(ビタミンDは除く)。
ビタミンDは太陽の光を浴びると体内で生産されますが、日光浴が無理な場合はサプリメントが必要です。
鉄や亜鉛の濃度は比較的低いですが、生体内での利用率と吸収率はより高いのです。
母体の鉄分の状態が問題なければ、赤ちゃんは乳児期に必要な量の鉄分を蓄えた状態で産まれてきます。
低出生体重児だけは、生後6カ月までに鉄分のサプリメントが必要になることがあるかもしれません。
分娩後、臍帯の脈動が止まるまでの約3分間、臍帯をクランプするのを遅らせると、生後6カ月間の乳児の鉄分の状態が改善することが示されました(6,7)。
「母乳で育つ赤ちゃんはくる病や貧血になりやすい説」は信頼度が低い
そもそも、母乳とくる病の関連性を主張する過去の論文は、「くる病」の定義があいまいだったり、サンプルサイズが非常に小さかったり、調査対象となった赤ちゃんはランダムに選ばれていなかったりと、研究の質が疑問視されるものがいくつもあります。
母乳と貧血の関連性を主張する論文でも、「(社会経済的な水準が低く貧血が蔓延している地域で)鉄分を与えたら赤ちゃんの貧血が減った」というような、母乳以外の要素が考慮されていない偏った研究デザインが目立ちます。
どちらも、もともとリスク要因がある子どもを連れてきて、「ほら、母乳で育っているとリスクがあるでしょ?」と言っているようなイメージです。
今では、「赤ちゃんに必要な栄養は母乳と生後6ヶ月からの適切な補完食でまかなうことができる」というのが世界的な認識になりつつあるんですね。
参考文献6
参考文献7
※へその緒のクランプを遅らせると、赤ちゃんの貧血が減る(6カ月)
母乳とくる病については「母乳=くる病のリスク大」は濡れ衣に、貧血については#貧血にも少し情報を載せています。
母乳育児に自信を失いそうなときは
わざわざ母乳をあげる意味はないかな、ミルクの方が自分の母乳よりも栄養豊富かな、などなど。自分の母乳に自信が持てなくなったときは、母乳の基礎の記事がモチベーションアップの役に立つかもしれません。
2017/1/29更新
コメント
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ブログと本を読んでいます(*^^*)
ビタミンk2シロップの投与についてはWHOは何か言っていませんか?(°_°)
私が通う病院では出産〜退院の間に2回ほどビタミンk2シロップを与える決まりだそうです。母乳育児推奨病院です。
母乳にはビタミンkが少ないからというのをネットで見かけたのですが、きちんとした論文を読んだわけではないので本当のところはどうなのか気になりました。
ブログと本を読んでいただきありがとうございます!
ご覧のように、WHOガイドラインには「母乳中にはビタミンKが少ない」とは書いていないんですよね。
ビタミンK2シロップは、リスクをより下げるためのものだと思うので、そのまま与えられるといいんじゃないかなと思います。
出産前に出会えてよかったです。
お子さんの個性に合わせていろいろ試行錯誤が必要になるかもしれませんが、お二人のペースをつかめるよう応援しています!
お返事ありがとうございます‧⁺◟︎( ᵒ̴̶̷̥́ ·̫ ᵒ̴̶̷̣̥̀ )
そうですね(°-°)仮に必要な量に足りていなければWHOに報告が上がっているはずですね。
ブログから知ったのですが私も出産前に出会えて本当に良かったです!!
本は母乳育児についてまとまっていてすぐ読めた&何回も読み返そうと思っています!ブログはテーマがたくさんあるので最初の記事から読破目指してます(﹡ˆᴗˆ﹡)
ブログ読破を目指すとは、文章を読むのがお得意なんですね!(感嘆)
産後、困ったことがあっても、「こんな話をどこかで聞いたな?」「こんな話がどこかになかったっけ?」と思えるだけで、負担も全然違うので、読み進められるよう応援しています。